BtoBのポイントサービス導入で、顧客情報を有効活用。

新製品の情報発信、買い替え需要の促進に。

 

大手工具メーカーA社様は、プロ仕様の電設工具の分野で大きなシェアを持つ工具メーカーです。エンドユーザーは、日本全国の電力会社や電機設備会社、水道、ガス設備業者など。直販は行っておらず、代理店を通じて販売しています。

 

同社は、世界のインフラを支えてきた信頼の電設工具製品と、高い技術力とユニークな発想で暮らしを便利で楽しくする家電製品を製造しています。

FAXで集めた顧客情報は、約20年前から蓄積を始めるも、多くは集まらず、有効活用には至っていませんでした。新たに担当となった若手スタッフより「顧客情報整理の負担が大きい。もう、やめませんか」という提案がありました。この一言がきっかけとなり、顧客情報の効率的な収集方法と活用の議論が始まり、エムズの支援のもと、B to Bのポイントサービスを導入することになりました。

 

■ポイントサービス導入の経緯①

顧客情報の収集方法をFAXからWeb登録へ変更。

集まった顧客情報は約10倍に。

A社工具事業部では20年ほど前から製品購入者の顧客情報をFAXで取得していた。インセンティブはボールペンなどの粗品で、返信率は1%前後だった。手書きで書かれた情報は読みにくいものもあり、整理するには工数がかかった。転記の際にミスも発生する。

 

結局、集めた顧客情報は粗品を送るために使う以外は、ほとんど活用したことがなかったため、FAXでの顧客情報の収集の停止が提案された。ちょうどそのころ、「エンドユーザーと直接つながる仕組みがあれば、買い替え需要の促進や新製品の情報発信がやりやすくなるのではないか」という議論が持ち上がった。

 

そこで、顧客情報の収集方法を見直すことになり、Web登録を導入。インセンティブは、FAXは粗品のままなのに対し、Webは500円分のギフトカードとしWeb登録へと誘導した。その結果、顧客からの反応は10倍に増え、顧客情報が効率的に集まるようになった。

 

■ポイントサービス導入の経緯②

BtoBでもポイントサービスはできないのだろうか?

そんな雑談が、エムズとの出会いにつながった。

 

2016年12月に、工具の購入額にあわせてA社の家電製品をプレゼントするキャンペーンを実施。キャンペーン自体はかなり好評だったが、発送業務を社内で担当することとなり現場の工数が想定以上に増加した。混乱する現場を見て、ご担当者様は「次に実施するなら、発送までやってもらえる仕組みを利用するしかない」と感じたそうだ。

 

何か他によい仕組みはないのか、スタッフとの雑談の中、ポイントサービスが話題に挙がった。「ポイントサービスは一般消費材では当たり前に行われている。我々の業界でも同じことができるのではないか」と考え、模索をすることに。たまたまカタログギフト業者の担当者にそんな話をしたところ、エムズを紹介された。

 

■ポイントサービス導入にあたり苦労した点

目に見えないポイントサービスの新規導入。

社内の理解を得るために、心強かったエムズのサポート。

 

ポイントサービスという目に見えないものを新たに導入することになる。「社内の理解を得るのが大変だった」と語るご担当者様。導入は決まったが、社内に専門家がいない。景品法などの法律関係にも明るくない。法務担当者に尋ね、インターネットで調べ、マーケティング関連の書籍を何冊も熟読した。社内に確立されたセオリーがなく、推進していくのは大変だった。

 

そのような中、エムズによる予想導入効果や、売り上げシミュレーションの提示などのサポートは、「非常に心強かった」とのこと。また、Web登録したら何ポイント、いくらの製品を購入したら何ポイントといった運用ルールや、ポイントの有効期間などの設計では、エムズによる他社事例を踏まえた説明が参考になった。ご担当者様は当初より、ポイント交換商品の種類が豊富な方が魅力的だと考えていたが、エムズのサポートでそれも実現できた。

 

「エムズさんのサポートなしでは、ポイントサービス導入には至らなかった」とご担当者様は語った。

 

 

■ポイントサービスへの期待①

ポイントサービスは、24時間働く営業担当者。

「ポイントが付くからAで」と思ってもらいたい。

 

ご担当者様によると、「一般消費材では当たり前になったポイントサービスを、この業界で他社に先駆けて導入することで、『A社の製品は、品質がいい。しかもポイントサービスもある!』と思ってもらえる。このような状況そのものが、A社の魅力になる」。電設工具は価格競争に巻き込まれにくい。とはいえ、「安い製品でいい」と考えるユーザーも必ず存在する。ポイントサービスは、安価な製品に流れやすいユーザーが「ポイントが付くからA社にしよう」と考える動機付けになると期待しているそうだ。

 

A社の場合、ポイントサービス導入時の既存顧客リストはそこそこあるも、そのすべてに営業担当者が訪問するのは難しい。しかし、メールマガジンという形でなら新製品の案内を一斉に届けることができる。メール開封時やログイン時にポイントを付与することで、顧客が自発的にメールを開封し、ホームページを訪問、ログインし、ページを閲覧する流れを作ることもできる。よく、ホームページを「24時間働く営業担当者」と称すが、ポイントサービスもホームページ同様、24時間働く営業担当者になり得るわけだ。ご担当者様は「個人的には、ポイントサービス運営専任のスタッフを1名配置してもよいと考えている。そのくらいポイントサービスへの期待は大きい」と語った。

 

■ポイントサービスへの期待②

販促だけでなく、在庫管理などに広がる可能性。

買い替え需要が高まる35年後の効果に期待。

 

従来、A社の営業手段は年間200回ほど開催される展示即売会が中心。顧客にダイレクトに接する場が展示即売会だけであるため、新製品をリリースしてから認知が広がるまでは2年から3年かかっていた。今後は、メールマガジンなどを活用し、新製品情報をタイムリーに発信していく予定である。また、展示即売会で購入に至らなくても、ポイントサービスに登録をしてもらえれば顧客予備軍となる。「あと1品買えば、ポイントで商品交換ができる」ことが購入の動機付けになるケースや、「ポイントが消滅する直前に販促メールを送る」ことで、購入につながるケースも増えていくであろう。また、製造部門でもポイントサービスに注目をしている。顧客情報と購入製品を紐づけ、製品のトレーサビリティ管理、生産管理や在庫管理に活用したいという議論が始まっているそうだ。

 

A社の製品のライフサイクルは、3~5年と長いものが多いことを踏まえ、ポイントの有効期間は3年と長めの設定をした。そのため、ご担当者様は、「ポイントサービスの効果が本格的に出てくるのは、少なくとも2~3年後」と予想。「ポイントサービスに対する期待は、とても大きい。‟5年間は絶対に続ける“と決めている」と力強く語った。

 

【まとめ】

B to Bのポイントサービスは、担当者自身のポイントサービス利用体験やB to Cでの成功事例がきっかけとなり、検討を始める企業が急増しています。しかし、B to Bの成功例として広く認知されている事例が少ないため、導入決定に至る過程で社内の説得に苦労しているという声を、様々な場面で耳にします。

 

ここでご紹介したA社様の場合、他事業でB to C市場における家電製品も製造しているため、B to Cでは当たり前のポイントサービスをB to Bにも応用するという発想が生まれやすい環境にあったと考えられます。また、エムズとの出会いにより、独自で情報を収集して構想を描いていた顧客データ活用によるCRMの推進イメージが、具体的な顧客施策シナリオとして具体的な形となったこともポイントサービス導入の後押しになったというお話でした。

 

本事例が、多くのB to B領域でポイントサービスに期待しつつも、導入に迷い、躊躇している企業の皆様の参考になれば幸いです。(岡田 祐子)

 

取材インタビュー:エムズコミュニケイト代表 岡田 祐子

マーケティングライター:粕谷 知美