株式会社やまとは大正6年(1917年)創業の老舗きもの専門店で、「きものやまと」をはじめとする複数のブランドを有し、2024年8月現在、全国に72店舗を運営しています。
フランス・パリのマレ地区にてポップアップショップを展開するなど、きもの文化の普及と発展を目指し、伝統を大切にしながらも現代のライフスタイルに合わせた商品やサービスを提供している企業です。


2023年5月にスタートした「やまとポイントプログラム」の導入は、社内的に、トップダウンでなく、ボトムアップ型で導入がスタートしたプロジェクトです。
ポイントサービスの新規導入を数多く支援してきた立場から申し上げると、ボトムアップ型の場合、さまざまな考えを持つ複数の経営幹部に、投資も伴う中、目的を共有し、意思決定してもらうまでが容易でないことはすぐに想像できました。 ポイントサービス新規導入においては、現場の担当レベルの考えを中心に、幹部に上申をしていきたいというケースも多いと考え、本事例を紹介したいと思います。


【ポイントプログラム概要】

やまとポイントプログラムは、株式会社やまとが展開する、全ブランド店舗で利用可能な会員制ポイントサービスです。


〈プログラムの主な目的〉
顧客の購買体験をより楽しく価値あるものにし、店舗への来店を促進すること

公式HPより引用:https://www.kimono-yamato.co.jp/yamato_pointprogram/



【サービス内容】

  • 購入ポイント付与: 通常の買い物で、税抜100円ごとに1ポイントが付与。
  • 特別ポイント付与:
    • さんちポイント: 期間限定で、特定の産地商品を購入すると、50~200ポイントの特別ポイントが付与。
    • 誕生月ポイント: 会員の誕生月には、500ポイントが付与。
    • 来店ポイント: フェア期間中や着付けレッスンなどの来店時にもポイントが付与。
  • ポイント利用: 500ポイント単位で、やまとが展開する全ブランドの店舗で利用可能。
  • ポイント有効期限: ポイントは付与から2年間有効。
  • マイページ機能: Web上のマイページで、購入履歴や現在のポイント数を確認できる。


    【ポイントサービス導入の背景】

    やまとでは、新POSシステムの導入に伴い、顧客情報を全社で一元管理する「顧客ID」システムのプロジェクトが進行していました。しかし、デジタルコミュニケーション室の室長であった延山氏は、そのシステム内で顧客との具体的なコミュニケーション方法が検討されていないことに疑問を感じていたといいます。
    現場からもポイントサービス導入の要望が多く寄せられており、延山氏自身も顧客との接点強化を図るため、ポイントサービスの導入を検討していました。
    当時、このように、ポイントサービス導入をボトムアップで幹部に提案していた延山氏から、導入のサポートについてエムズコミュニケイトへ問合せをいただきました。これがきっかけとなり、経営会議が開催されるたびに、資料作成の支援や、経営会議で出た意見や指摘されたことについて再検討し、また提案するプロセスを繰り返していきました。



    【顧客接点設計の重要性】

    店長の経験を持つ延山氏はデジタルコミュニケーション室の部長となった際、顧客にとって、きものは一生に一度の大切な買い物であるとの視点から、顧客接点の設計が重要であると考えたそうです。
    そのことから、「顧客が必要な時に安心して戻ってこられるやまと、そして各顧客に適切な案内ができるやまと」を実現できる顧客接点設計を提示。さらに、顧客ID統合により、より正確な顧客分析を通じて、利益向上に貢献する視点も盛り込みました。
    延山氏は、「ポイントプログラム導入は全社員に影響を及ぼすプロジェクトであり、各自が自分事として捉えなければ収拾が難しく、巻き込む力が必要だった」と振り返っています。

     

    ポイントサービス導入プロジェクトリーダーでリリースまで牽引された
    [株式会社やまと取締役 延山 直子氏]

     

    【理念を持って進めていくことが大事】

    ポイントサービスを店頭の接客の中で、どのツールでどのように運用するか、また店員が使いこなせるかという心配があり、一緒に検討を重ねさせていただきました。
    そこで、マニュアル類の作成を行い、Zoomによる現場研修で運用を定着させました。ポイントシステムについては、複数のベンダーを比較し、選定を行いました。


    「エムズさんいたお陰でポイントプログラムは導入できたと思っております。ベンダー様の選定から比較、また要件定義などもお手伝いいただけ、スムーズに導入できました」と振り返る延山氏。
    本プロジェクトの経験を踏まえ、これから導入検討する方々に伝えたいことを聞いてみたところ、「いろいろなシステムを組合せなければならないし、何をしたいか明確にしないと迷うことが出てくるため、ちゃんと理念を持って進めていくことが大事だと改めて思いました。」とおっしゃっていました。



    【まとめ】

    今後は、会員基盤を活かしたファンづくりを行い、さらなるブランド価値の向上を目指していくそうです。


    やまとポイントプログラムの導入は、現場の提案を経営層に上申し、全社的な取組みとして成功させた事例と言えます。
    顧客接点の強化とデジタルツールの活用により、顧客満足度の向上とリピーターの増加を実現しています。ボトムアップの導入事例であるが、推進者の強い意志が、経営層や現場を動かす原動力となるのだと、あらためて実感したプロジェクトでした。

     

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