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CCC、「TSUTAYATV」――T―MEDIAホールディングス執行役員山内智裕氏(この会社この商品)

2016.02.08

動画配信・宅配セットで 「お薦め」幅広く/独自作品も拡充
 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が動画配信サービス「TSUTAYA TV」の機能を強化している。DVDやCDの宅配サービスと組み合わせて利用できるようにしたほか、独自作品の配信にも力を入れ始めた。CCC傘下でネット事業を統括するT―MEDIAホールディングス(東京・目黒)の山内智裕執行役員に戦略を聞いた。
 ――米ネットフリックスなど他社の動画配信サービスと比べた優位性は何ですか。
 「我々はCDやDVDのレンタル事業を通じて、顧客1人ひとりの長年の貸し出し履歴を蓄積している。ポイント会員である『T会員』は約5600万人に上る。昨年に資本業務提携した映画レビューサービス『フィルマークス』の投稿データなどをもとに、顧客ごとにお薦め作品を効果的に提案できる」
 「ただ、データベースの活用だけに頼るわけではない。あえて(CD・DVDレンタルの)TSUTAYAの店員や本部のマーチャンダイザー(MD)、映画好きの有名人が推す作品もお薦めしていく。データベースでは把握しきれない潜在的な好みもあるからだ」
 ――サービス面での工夫はありますか。
 「昨夏から配信サービスとDVDなどの宅配サービスを組み合わせた定額プランを用意した。動画配信では見られない作品も宅配サービスで貸し出す。動画配信では現在約5万作品を扱うが、宅配貸し出しを含めると約30万作品に増える」
 「作品の配信はこれまでストリーミング(逐次再生)方式だったが、ダウンロードもできるようにした。『飛ばして見たい』というニーズも少なからずあるので、2倍速で見られる機能も新たに導入した」
 ――利用者の動向は。
 「会員数は昨年8月にサービスを強化したところ、直後の9月に8割ほど伸び、その後も毎月2~3割のペースで安定的に増えている。動画見放題と借り放題を組み合わせた月2417円(税別)のプランを選ぶ顧客が多い」
 「旧作は見放題で新作も2本まで視聴できるほか、CDやDVDを借りて自宅に届けてもらうことが可能だ。動画見放題だけだと、月933円(同)で使える」
 ――独自作品の配信にも力を入れています。
 「1つは映画のクリエーターから作品を募集し、制作から貸し出し、配信まで支援する取り組みだ。昨年11月に最終審査会を開いた。受賞した3作品について、CCCがそれぞれ最大5千万円の制作資金を支援する。もう1つが商用化していない自主制作映画などを配信する取り組みだ。魅力的な作品を発掘するとともに、映像文化の底上げにも貢献したい」
記者はこう見る
参入相次ぐ市場
強み生かせるか
 動画配信は2015年に国内で月額定額制のサービスが次々と始まった。野村総合研究所によると、15年度の動画配信の市場規模は1495億円の見込み。右肩上がりで伸び、20年度には2000億円を超えると試算する。国内勢に加え、米ネットフリックスなど外資勢が参入し、顧客獲得に火花を散らす。
 T―MEDIAホールディングスの山内智裕執行役員は「同質の戦いになると、つぶし合いになる可能性がある」と指摘する。CD・DVDレンタル最大手の強みを生かし、自社の優位性を顧客にいかに理解してもらうかが勝ち残りの鍵となる。(山端宏実)
 
 
 日経産業新聞,2016/02/04,ページ:6