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電力自由化、金融機関動く、八十二銀、地元から調達、長野銀は取引先を紹介、県内、電気代削減ねらう。

2016.02.08

 4月の電力小売り全面自由化を控え、新電力会社が長野県内の金融機関と組んで法人向け営業を強化している。金融機関も店舗で使う電力を地元のバイオマス発電業者から調達してエネルギーの地産地消を進める。企業や顧客との接点の多い金融機関も絡んで県内の契約獲得競争が激しくなれば、電気代削減につながる企業も出てきそうだ。
 八十二銀行は4月からバイオマス発電のグリーンサークル(長野市)から電力供給を受け、市内の浅川若槻支店と82プラザ長野の2支店の電力をまかなう。2店舗の電気使用量は年間21万キロワット時にのぼり、同行としては中部電力以外から電力を調達するのは初めてだ。
 長野信金(同)も4月にグリーンサークルから電力を調達する。本店の本部と営業部が別の建物で分かれているため2カ所で電力を調達する。
 グリーンサークルは長野市に本社を置く宮沢木材産業の関係会社で、間伐材などを燃やして発電し、大手より安く電力供給できる。金融機関にとっては安く電力を調達できるだけではなく、環境への取り組みもPRできる。
 八十二銀は日本経済新聞社が1月に発表した環境経営度調査でも全国の銀行で1位となり、長野信金も本店で地中熱を使った空調システムに切り替えるなど環境への配慮を打ち出している。「エネルギーの地産地消を進めて地方創生にも役立つ」(八十二銀総務部)という。
 長野銀行は電気代を削減したい取引先を新電力に紹介している。電力小売りを手掛けるオリックスと15年2月に業務提携した。オリックスは自社発電したり、電力会社などから調達したりした電力を県内企業に割安な価格で提供する。長野銀総合企画部の担当者は「倉庫会社やゴルフ場などの利用が多い」と手応えを話す。
 現在、自由化されているのは法人向けの大型ビルや工場向けの特別高圧と高圧のみ。4月以降は低圧の一般家庭や商店向けも自由化される。一般家庭や商店、事務所は工場と違い電力需要が一定だ。電力会社にとって需要の急激な変化に対応する必要が少なく、収益を確保しやすいのが魅力だ。
 新電力を迎え撃つ中部電力の勝野哲社長は「他社に遜色ない料金やサービスが準備できた」と自信をのぞかせる。4月の全面自由化後には金融機関の金利引き下げ競争のように、価格競争が激しくなる可能性もある。
 
 
 日本経済新聞 地方経済面 長野,2016/02/02,ページ:3