中国のコンビニなど顧客分析で誘客、実店舗、広がる会員アプリ、購入状況でポイント付与(アジアFocus)
2016.11.21
【上海=小高航】中国でコンビニエンスストアなど実店舗の顧客動向を分析して、誘客につなげる動きが本格化している。IT(情報技術)ベンチャーの游仁堂はポイントサービスと連動した会員アプリを開発。ローソンの中国の店舗が導入した。日本でもポイントサービスを活用した顧客分析と囲い込みの動きが目立っているが、ネット通販の普及で実店舗の苦戦が目立つ中国でも同様の試みが広がりそうだ。
中国でデジタルマーケティングサービスを提供する游仁堂は2015年から、上海のローソン店舗にスマートフォン(スマホ)用の会員アプリの提供を始めた。今年に入り、北京や大連(遼寧省)、武漢(湖北省)などの店舗に提供範囲を広げている。
会員アプリ「羅森(ローソン)点点」は、会員向けに新しい商品やサービス情報を配信したり、店舗での購入状況に応じてポイントを付与したりする。1元(約15円)の買い物ごとに10ポイントがたまり、1000ポイントで1元のクーポンを提供する予定だ。
上海市内のローソンではサービス開始以降、会員数が35万人に増加。週に1度以上、アプリを利用するアクティブユーザーは全体の約15%で、平均の来店回数は週に約3回と頻度が高い。游仁堂はローソンから約90万ドル(約1億円)の出資を受け、アプリの機能を拡充する。
顧客属性や購買履歴を基に、消費者の嗜好などを分析。例えば会員の勤務先に近いコンビニ店舗で「3~5時までコーヒー1杯無料」といったクーポンを配布し、来店客が少ない午後の時間帯の誘客につなげるといった利用法を想定している。
中国ではアリババ集団などのネット通販サービスが急速に普及する一方、百貨店を中心に実店舗は苦戦が続いている。コンビニは実店舗の中でも比較的に好調を持続しているが、游仁堂の金田修総経理は「まだ集客力を高める余地は大きい」と話す。
会員アプリでは顧客属性や位置情報をリアルタイムで把握できる。広告配信や会員の好みの分析などを通じてメーカーからの収入が見込めるほか、客の好みに応じたサービス提供で店舗の魅力を高める。
中国は経済の成長エンジンを従来の投資や輸出から、個人消費にシフトしようとしている。サービス産業は多くの雇用を抱えるため個人消費の重要な担い手だ。ただ実店舗が衰退すれば、雇用吸収力や従業員の所得水準が低下し、消費に悪循環を及ぼす。ネット通販と実店舗のバランスの取れた発展が課題となる。
日経MJ(流通新聞),2016/11/21,ページ:10