格安スマホ「TONE」安心訴求―アフターサービス、手厚く(戦略ネットBiz)
2016.01.25
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループで格安スマートフォン(スマホ)を販売するトーンモバイル(東京・渋谷)が「安心・安全」を売りに攻勢をかけている。競合がスマホの機能や価格で他社からの乗り換えを狙う中、同社は購入後の手厚いサービスの充実で、子供や高齢者らスマホデビュー層を開拓する。
「世界一安心・安全なコンピューターサービスを提供したい」。トーンモバイルの石田宏樹社長CEO(最高経営責任者)は、こう力を込める。
格安スマホを巡る競争が激化する中、トーンモバイルが2015年11月、満を持して投入したのが最新機種「TONE(m15)」(税別2万9800円)だ。トーンモバイル会長で、CCCの増田宗昭社長兼CEOと二人三脚で完成させた。
特徴は大きく2つある。1つは手厚いアフターサービスだ。その柱となるのが「置くだけサポート」と呼ばれる機能。スマホに電源を入れて箱に置くだけで、不具合などを自動的に検知する。解決しない場合は、サポートセンターに電話し、担当者に相談できる。
このほかにも手持ちのパソコンから紛失したスマホの位置を確認して遠隔からアラームを鳴らしたり、子どもがあらかじめ登録した場所にスマホを持って入ると親に自動で通知が飛んだりする機能も備える。
もう1つが、シンプルな料金体系だ。携帯の料金体系は複雑になりがちだが、TONEの料金プランは、パケット使い放題と通話基本料を合わせて月額1000円(税別)の1つしかない。
トーンモバイルは特に子どもや高齢者を対象にしている。格安スマホは機能や価格が似たり寄ったりで、どれを選べばよいか分からないとの声が少なくない。同社は他社との違いを鮮明にし、「他社からの乗り換えよりも、いかにスマホを使っていない層に普及させるかを優先する」(石田社長)ことで拡販をめざす。
安心・安全を訴求するうえで、CCCとの連携も進める。トーンモバイルは自社サイトで販売するほか、CCCが全国展開している直営のTSUTAYAや蔦屋書店、東京・二子玉川の蔦屋家電を中心に20店舗弱に売り場を設けている。
今後は売り場展開を加速していくため、TSUTAYAのフランチャイズチェーン(FC)店への出店も視野に入れている。現在CCCと詳細を詰めており、「今春には形にしていく」(石田社長)。200店舗が1つの目安になるという。
CCCにとっても、トーンモバイルは今後の成長戦略を描くうえで、欠かせない存在だ。CCCはTSUTAYAや蔦屋書店、共通ポイント「Tポイント」のほか、創業の地である大阪府枚方市で今春に百貨店を開業する予定だ。
買い物からレストランの予約、動画鑑賞まで消費者がスマホに費やす時間は着実に増えている。増田社長は「手のひらにライフスタイルを提案したい」と語る。
他の仮想移動体通信事業者(MVNO)も安さだけでなく、独自の付加価値サービスを組み合わせ、消費者への訴求力を高めている。既存の携帯3社も政府からの異例の値下げ要請を受け、「ライトユーザー」に手厚いプランが出てきている。
トーンモバイルは今後、知名度を高めるとともに、FCを軸に売り場展開を加速し、販売量を伸ばす戦略。16年はトーンモバイルにとって、ビジョンだけではなく実績が問われる1年になりそうだ。(山端宏実)
日経MJ(流通新聞),2016/01/20,ページ:9