不動産がマンション向け電力小売り、長谷工、5%前後割安、野村不系、1棟単位提供。
2016.07.20
不動産各社がマンション向けの電力小売りを相次ぎ始める。長谷工コーポレーションが5%前後割安な価格で売るほか、野村不動産ホールディングス(HD)もマンション1棟単位で電力提供を始めた。電力小売りが全面自由化されて3カ月経過したが、まだ慎重な消費者が多く、契約切り替えのペースは鈍っている。管理物件の入居者へのサービス向上になり、囲い込みにつながるとみて割安な電気を供給する。
長谷工は秋にも関東、関西、中部地域の50戸未満の管理物件に入居する家庭を対象に電力小売りを始める。小売電気事業者登録をした子会社、長谷工アネシス(東京・港)が各入居世帯へ契約切り替えを提案する。
料金プランは調整中だが、大手電力会社の料金プランと比べて5%前後安くなると見込む。電気の供給エリアは順次広げ、将来は自社の管理物件以外への提供も予定する。
マンション管理組合を通じ、普段から家庭との接点が多い強みを生かして顧客を開拓する。
野村不動産HDも新会社のNFパワーサービス(東京・新宿)が電力小売りを始めた。50戸以上のマンションを対象に、同社が調達した割安な電力を棟単位で一括契約して、マンションの各戸や共有部に配電する。
マンション全体のエネルギー管理システム(EMS)も構築し、マンション内の無駄な電力消費を見つけて節電する。100戸規模の既築マンションの場合、電気代が各戸で電力大手より3~6%削減できるほか、共用部では20~40%減らせるためマンション管理費の抑制にもつながる。
東京急行電鉄の新電力子会社、東急パワーサプライ(東京・世田谷)は東急グループの不動産関連会社を通じた営業活動を始めた。不動産仲介の東急リバブル(同・渋谷)や、首都圏で6万6千戸の賃貸物件を管理する東急住宅リース(同・新宿)などと連携し、賃貸マンション入居者などに契約切り替えの営業を進める。
経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関によると6月30日までに電力契約先を切り替えた家庭は約126万件。異業種からの新規参入が相次いだが、全契約の2%程度にとどまり、切り替えのペースも鈍っている。
安定供給は維持されながら電気料金は割安になるなど、自由化の利点を消費者に十分訴求できていないことが、伸び悩みの一因とされる。
一方、ガスやケーブルテレビなど本業で家庭との接点が多い企業は契約件数を積み上げている。不動産・建設各社は来店する入居希望者や、マンション管理組合などを通じて電力自由化の利点を丁寧に説明して契約切り替えを促す。
日本経済新聞 朝刊,2016/07/18,ページ:5