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近鉄百貨店上本町店―若いママに照準徹底、子供の遊び場無料で開放(めざせダントツ店)

2016.06.13

 近鉄百貨店が上本町店(大阪市)を大規模改装し、2月にリニューアルオープンした。同店の主力顧客は50歳代以上だが、近年は周辺部で高層マンションなどの開発が進み、30~40歳代の子育て世代の来店も増えている。今回の改装ではベビー用品専門店を誘致。子供向けの遊び場を設け、新たな顧客を呼び込む。
 7階の子供服やベビー用品などを扱うフロアには自動車を模した遊具や、積み木で遊ぶ子供たちの姿。横にはベビーカーが並び、母親たちが子供を見守りながら談笑している。
 改装で売り場の中心に玩具のボーネルンドが手掛ける広さ33平方メートルの子供用の遊び場を設けた。同店の営業第一部で子供服や玩具などを担当する阿部嘉朋係長は「遊び場を作ってからは何も買わずに遊びに来るだけのお客さんもいる」と笑うが、意に介する様子はない。「まずはこのフロアに足を運んでもらうことが肝心。たまり場としてくれればいい」と話す。
 今回の改装に1億円弱を投じた。きっかけはポイントカード保有者の購買データの分析結果だった。同店では50歳代以上への販売が約8割を占め、30~40歳代は1割程度にすぎない。だが2~3年ほど前からこのフロアでは急激にシェアが増え始め「2~3割を占めるまでになっていた」(阿部係長)という。
 これまでも同フロアは子供服やおもちゃなどを扱うフロアだったが、対象は主に孫にプレゼントを買う祖父母が中心。「若い母親層を主ターゲットにすれば、新たな顧客も呼び込める」(同)とみて大規模な売り場改装に踏み切った。
 まず決まったのが大きな遊び場を設けることだ。「子供を落ち着いて遊ばせられる場所が周辺にない」(同)。無料の大きな遊び場を設ければ店への滞在時間をもっと延ばせると判断した。
 授乳などに使う赤ちゃんサロンもこれまでの約3倍となる84平方メートルに拡張した。離乳食を温める電子レンジ、広い食事スペースも設け、居心地の良さにこだわった。
 同店の規模では、調達や在庫管理の効率を考えると数多くの種類のベビー用品を展開することが難しい。ベビー用品の商品ラインアップを広げるため、専門店とも組んだ。誘致したのが愛知県を地盤とするベビー用品チェーン「ハロー赤ちゃん」。同フロアの売り場の4割近くを占める店には10種類以上のベビーカーやチャイルドシートが並び、ベビーウエアも30ブランドがそろう。
 またミキハウスが展開する幼児用品専門店や、絵本売り場など、専門性の高い新しい店も入れ、コアなファンの開拓にも力を入れる。
 改装後の2月下旬から4月末までのベビー用品や子供服の販売実績は前年比12%増と、堅調なスタートを切った。ハロー赤ちゃんの集客効果で既存の子供服ブランドの店の販売が2~3割伸びているという。今年度はフロア全体で5%増の販売を目指すと語る阿部係長。「ハロー赤ちゃんにいかにリピーターを呼び込めるかがキモになる」と力を込める。
 
 
 日経MJ(流通新聞),2016/06/06,ページ:5