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CCC、百貨店「枚方T―SITE」開業、店とネット、スマホで融合、専用アプリ、予約・決済自在に。

2016.05.24

購買データ 集客・販促に活用
 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は創業の地である大阪府枚方市に「百貨店」を開いた。CCCが百貨店をイメージした総合型店舗を手掛けるのは初めて。スマートフォン(スマホ)1台で、近くの駐車場の検索からレストランの予約、決済、ポイント付与までできるようにした。スマホ時代の新しい百貨店像を提案する。
 16日、京阪枚方市駅の目の前に「枚方T―SITE」を開いた。総面積は約1万7500平方メートルで、地上8階、地下1階建てという構成。主に半径2キロメートル圏内に住む人が日常的に使えるように、食とエンターテインメント、金融を中心にテナントをそろえた。
 1階は「食マルシェ」という位置付け。例えば、午前7時のオープンと同時に焼きたてのパンが食べられるほか、仕事帰りのビジネスパーソンがバーでワインを飲める。エンタメは、2階の「TSUTAYA」と3階などの「蔦屋書店」が中心。今夏には、地下1階に生鮮品の有名専門店などが入る食品売り場を開く。
 5階は家族で来やすいように、「子どもと学び」の空間にした。玩具のボーネルンドなどが出店し、遊び場もたくさんある。14日の内覧会に家族で訪れた主婦の西田あゆみさん(40)は「子どもを連れてきやすそう」と話す。比較的時間に余裕があり、資産も多く持つシニア層が資産運用の相談ができるように、6~7階には銀行が入る。
 最大の特徴は、スマホとの融合だ。14日に枚方T―SITEで開いた記者会見でCCCの増田宗昭社長は「スマホと一体化した百貨店を目指す」と力を込めた。
 新たに専用アプリ(応用ソフト)「T―SITE Passport」を開発。手持ちのスマホにアプリを落としておけば、近くの駐車場の空きを調べられるほか、レストランを予約したり、TSUTAYAでCDやDVDを借りたりできる。今は蔦屋書店とTSUTAYAに限られるが、CCCの電子マネー「Tマネー」で決済し、共通ポイントの「Tポイント」もためられる。CIO(最高情報責任者)を務める石田宏樹常務は「店舗とネットをアプリで融合する」と語る。
 このアプリは枚方T―SITEだけにとどまらない、CCCのオムニチャネル戦略の核となる存在だ。まずは枚方で運用を始め、今後は東京・渋谷や神奈川県藤沢市にある複合商業施設「T―SITE」に広げる予定。将来的には、全国のTSUTAYAに展開することも視野に入れる。
 枚方T―SITEに入るテナントに対しては、Tポイントの顧客や購買データを活用し、販売促進を支援していく。「リアルの小売業は誰が、いつ、何を買いに来たのか把握しづらく、お薦めがしにくい。それを補う意味で、データベースマーケティングは欠かせない」(増田社長)。
 枚方T―SITEは増田社長が1983年にTSUTAYAを創業した場所の目の前にある。増田社長にとって、生まれ故郷の枚方に開く百貨店は創業時から掲げる「ライフスタイル提案」の集大成だ。CCCは地域の実情にきめ細かく応えられるように、フランチャイズチェーン(FC)経営を基本に据える。枚方T―SITEを軌道に乗せ、ゆくゆくはFC展開する青写真を描く。
 増田社長はTSUTAYAやTポイント、蔦屋書店といった新ビジネスを生み出した。門外漢の百貨店で、消費者の心をつかめるか。「企画会社」としての力量がいま一度、試されている。
 
 
 日経MJ(流通新聞),2016/05/18,ページ:5