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個人データを一括管理、「情報銀行」構想、政府が後押し。

2016.05.24

 政府はネット通販の購買履歴などの情報を一括管理する「情報銀行」の仕組みづくりを後押しする。テレコム事業者など民間企業が情報銀行をつくり、個人が利用できるようにする。2年後の利用開始を目指す。民間企業が蓄積したビッグデータの活用が広がるなか、情報の提供先を個人が把握できるようにし、個人情報の無断使用の防止にもつなげる。
 IT総合戦略本部(本部長・安倍晋三首相)が近く取りまとめる「世界最先端IT国家創造宣言」の改定案に盛り込む。夏にIT本部直轄で検討会を立ち上げ、必要な法整備などの議論を始める。
 情報銀行が管理するデータは、ネット通販やポイントカードから得られる購買情報、ウエアラブル端末などを使って記録した個人の健康データなど。個人は情報銀行に対してあらかじめ興味のある分野や信頼する企業など自分の情報を提供してもいい範囲を定める。情報銀行は個人との契約を基にデータ販売など情報ビジネスで収益を得られる一方で、個人は情報提供先からポイント還元などを受けられる仕組みを想定している。
 ビッグデータの活用は月末にも取りまとめる成長戦略の重点分野となっている。ただプライバシーの問題が課題だ。2013年にはJR東日本が電子乗車券「スイカ」の利用履歴を外部に販売したことが問題となった。個人情報は匿名で処理されているものの、自分の記録が知らないうちに第三者に利用されることに消費者が反発した。
 政府はこうした事態を避けるため、情報銀行の活用を進めてビッグデータ活用の基盤を整えたい考え。情報のやり取りが複雑になる中で、個人が自分の個人情報の提供先を追跡できる仕組みを構築し、安心感を高める。
 
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/05/17,ページ:4