楽天、共通ポイントで「相乗り」――コンビニ統合で争奪戦に(戦略ネットBiz)
2016.05.02
楽天が共通ポイント事業で「相乗り」戦略を推し進めている。業界では「1業種1社」が慣例になっていたが、エネルギー業界を中心に複数の共通ポイントを採用する例が増えている。楽天はインターネット通販「楽天市場」など70以上のグループのサービスでポイントが使える魅力を訴え、「Tポイント」など競合の加盟社に併用提案を仕掛けている。
電力自由化で新料金を相次ぎ発表したエネルギー業界。西部ガスのプランでは、電力料金の支払いに応じてたまるポイントの対象に「Tポイント」「Ponta(ポンタ)」「楽天」「WAON(ワオン)」の大手4社が名を連ねた。
昨年、東京電力が相乗りのタブーを破ると業界各社が続いた。楽天幹部は「1業種1社の時代は終わった。どのサービスでも全てのポイントが使えて顧客が選択する時代だ」と強調する。
スーパーや飲食店などで、ためたり使ったりできる共通ポイントは2000年代に登場。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの「Tポイント」と、三菱商事系のロイヤリティマーケティングの「ポンタ」の2陣営が競いあっていた。
14年以降、楽天が「楽天スーパーポイント」を実店舗で使えるようにしたほか、NTTドコモが「dポイント」で参入。イオンも6月にも「ワオンポイント」を他社に開放する。
1業種1社は「企業は競争しているので、どこでも入れるようにすると誰も入ってくれない」(CCCの増田宗昭社長)のが理由だった。
また、相乗りになった店では、消費者が買い物する際に複数ある共通ポイントから1つを選ぶ。ポイント事業者から見れば、自社サービスを選んでくれた消費者の情報しか得られず、蓄積データを商品開発に生かす力も薄まる。
だが、膨大な顧客を抱えるエネルギー業界の相乗り姿勢は、加盟店の中で顧客を奪い合う時代に突入したことを意味する。ポイントが使える店舗を増やすだけではなく、他社とは違う付加価値が必要になる。
昨年12月に紳士服店「洋服の青山」が導入したサービス「楽天チェック」。顧客が店舗を訪れてスマートフォン(スマホ)のアプリを立ち上げるだけで、楽天のポイントがたまる。
「洋服の青山」を運営する青山商事はTポイントと提携している。「来店者は店舗に入るだけで楽天ポイントがたまり、商品を購入すればTポイントがもらえるんです」。楽天はTポイントに気をつかう青山商事に、メリットをこう説明した。
楽天ポイントは楽天市場や旅行などグループの70以上のサービスで利用できる。楽天はチェックを入り口に他のポイント陣営に切り込み、楽天ポイントの導入を促す。
注目されるのが、9月に経営統合する大手コンビニエンスストアのファミリーマートとサークルKサンクス。ファミマはTポイント、サークルKは楽天ポイントだが、店の屋号は「ファミリーマート」に統一することが決まっている。
ポイントもTポイントに統一されれば、サークルKで楽天ポイントを使っていた顧客はポイントが利用できなくなり、楽天はポイント経済圏において欠かせないコンビニを失うことになる。
サークルKもTポイント連合に取り込みたいCCCと、相乗りを狙う楽天のどちらに軍配が上がるか。コンビニ統合を巡るポイント争奪戦は、対照的な戦略を掲げるCCCと楽天のどちらのビジネスモデルが主流となるかの試金石にもなる。
日経MJ(流通新聞),2016/04/27,ページ:7