松屋フーズ、券売機に顔認証、客の性別や年齢把握、商品開発・改装に生かす。
2016.04.25
牛丼大手の松屋フーズは2017年3月末までに全店(約1千店)の食券販売機を顔認証カメラ付きの機器に切り替える。カメラの画像から来店客の性別やおおよその年齢といった情報を収集する。外食チェーンは全店共通のメニューや店作りで効率性を追求してきたが、松屋フーズは食券販売機で収集したデータを生かし、店ごとにメニュー構成や内外装を変えていく考えだ。
昨年2月から導入を始めた新型の券売機は上部にカメラを備え、注文客の顔の画像から性別やおおよその年齢を判別する。年齢は10代から60代まで10歳ごとに6段階の年代で識別。集めた情報は本部に自動的に送られる。顧客ごとの注文内容が分かり、各メニューの客層も把握できる。
また、画面のメニュー表示も英語、中国語、韓国語に切り替えられ、外国語で注文した外国人客の割合もつかむ。従来は顧客情報を収集する手段がなく、店長らの判断に頼っていたという。
ポイントカードやスマートフォン(スマホ)のアプリを活用して来店客の利用情報や属性を集めようとする外食企業は多い。だが、すべての顧客がポイントカードなどを使うわけではない。また、アプリなどは利用者自体が比較的若いなど偏りがある場合もあり、正確に各店の客層をつかめない可能性もある。
松屋フーズの券売機を用いる手法では、注文する客すべてのデータを収集でき、客層を把握できるメリットがある。こうしたデータをまず改装や新メニューの試験販売の効果検証に活用する。
3月にリニューアルした久我山店(東京・杉並)の改装効果の検証にデータを利用した。同店は外部の女性の設計士を登用し、女性向けに内外装を変更した実験店で、券売機のデータにより女性客が改装前と比べて2割ほど増えたことが確認できた。効果を確認できたため、今後は券売機のデータを基に女性客が比較的多い店を同様に変更していく方針だ。
3月から一部店舗で試験販売中の女性向け新商品「スープごはん」の効果検証にもデータを活用している。試験販売する店舗を切り替える予定だが、券売機のデータから女性客の比率が高い店を選んで実験する考えだ。
一般の飲食店などで店員が客の風貌から性別や年齢をレジに入力する事例が多い。この券売機はそれを代行している形で、食券販売機から本部に送られるのは性別や年代といった属性情報。客の顔写真が撮影されて残るわけではない。
今期中は全店の券売機を変更し、データを蓄積する。来期以降に店ごとの客層の違いをもとにメニュー構成や内外装を変えていく。従来のチェーン店は全店共通のメニューや店作りが一般的だったが、顧客のニーズが細分化し、同じ商品や店構えでは幅広い客層を呼び込みにくくなっている実情がある。同社は大量の顧客データを基に立地別にメニューや店作りを変える体制を作る。
日経産業新聞,2016/04/22,ページ:9