「省エネ住宅ポイント」導入1カ月―住設各社が攻勢、リフォーム市場盛り上がる
2015.05.12
住宅市場の活性化に向けた「省エネ住宅ポイント」事業のポイント申請受け付けがスタートしておよそ1カ月が経過した。住宅設備メーカーが大きな期待を寄せる同制度。前回の制度に比べて対象住宅の性能要件が広がり、使い勝手が良くなった。消費増税後の需要低迷に苦しんだ各社はこの好機をとらえようと攻勢を強めている。
【国交省の公表】
国土交通省が公表した3月末時点の省エネ住宅ポイントの実施状況によると、ポイントの申請受付数は6325戸。このうち新築が2188戸、リフォームが4137戸となった。
まだスタートしたばかりで断定はできないが、前回の「住宅エコポイント」事業に比べてリフォームの割合が相当大きいことは住宅購入の“ついで”に制度が利用されるのではなく、住宅設備の新しい需要が喚起されていることを意味する。制度面でもリフォーム寄りの設計に改められているのが効いているようだ。 住宅設備メーカーの動きも加速している。LIXILは2014年末に社内横断のプロジェクトを立ち上げ、制度開始に備えてきた。プロジェクトを統括した太田博明常務執行役員は「(省エネ住宅ポイントは)15年度の起爆剤」と位置付ける。
【トータルで提案】
あらゆる住宅設備をトータルで提案できる強みを生かしつつ「我々と流通、ビルダーが三位一体で動いている」(太田常務執行役員)。社内での制度利用も増やそうと社員向けの説明会も始めた。「リフォーム市場を盛り上げたい。パイを取り合うのではなく、どう広げるかだ」(同)と強調する。
こうした思いは各社に共通する。「リフォームはマインドが大事。追い風にしないといけない」(日高和也TOTO商品営業企画グループリーダー)。TOTOは高断熱浴槽や節水型トイレ、高効率給湯機、節湯水栓などのうち3種類以上を組み合わせると制度の対象になる点に着目。水回りのリフォームに狙いを定めた営業戦略を展開する。営業用のチラシは前回の4倍以上の120万部用意。1月から開催した工務店や流通向けの勉強会には延べ2万人が参加した。「水回りの得意な事業者が好感を持って動いている」(同)。
YKK APはガラス店やサッシ店などの提携先約1000店舗の「MADOショップ」で窓リフォーム相談会を15年中に3回開く予定。全国一斉のイベント開催は初の試みだ。前回の住宅エコポイント事業ではリフォームの中でも窓の断熱改修が最もポイント発行件数が多く、全体の約半分を占めた。室内側から簡単に施工できる「スマートカバー工法」などを武器に、確実に需要をとらえる構えだ。
さらにTOTOとYKK APはリフォーム事業で提携する大建工業と3社共同で「グリーンリモデルフェア」を全国4カ所で開催する。住宅関連メーカー7社も加えてリフォームを総合提案。4カ所で計約7万4000人の来場を見込む。
【ボーナス商戦】
今回の事業予算は905億円。対象期間は16年3月までだが、予算がなくなれば終わる。“天王山”となる夏のボーナス商戦に向け、各社の動きも熱を帯びそうだ。
日刊工業新聞,2015/04/30,10面