東電、電気と携帯セット割引、ドコモなどと交渉、ポイント導入も。
2015.03.31
東京電力は携帯電話会社と提携し、通信と電気をセットにした割引販売に乗り出す。月内にNTTドコモなど大手3社と交渉を始め、2016年度から開始する。買い物に使える共通ポイントの導入も検討する。16年4月からの家庭向けの電力小売り自由化(3面きょうのことば)で、新規事業者との競合が激しくなる。管内の契約維持だけでなく全国で「越境供給」するためにも、異業種との連携で割安感を打ち出す。(関連記事13面に)
東電は近くKDDI(au)とソフトバンクを含めた3社からセット販売の事業提案を募り、4月中にも提携先を1社決める。携帯電話会社との提携によって「携帯電話の契約を他社から乗り換えた客には電気料金を1年間10%下げる」といった料金プランが可能になる。
東電は携帯各社の窓口で電気の契約を受け付けることも検討する。16年の自由化後、東電は首都圏など管内だけでなく全国の家庭への電気供給も検討している。豊富な営業拠点を持つ携帯電話会社と組むことで、新規客を取り込めるとみている。東電の新事業がきっかけとなって、関西電力なども携帯大手との提携に動き出す可能性もある。
携帯各社も電力会社と組むメリットが大きい。KDDIやNTTドコモは携帯電話と光回線のセット割引に乗り出している。同じ月払いの電気も商品に加われば、消費者にとって「まとめ買い」の利便性が高まる。
1999年から電力自由化を始めた英国では、電気と携帯、固定回線、ガスなどの契約を組み合わせた多くの料金のプランがある。消費者の6割が電力会社を乗り換えた経験があるとされる。
東電はコンビニエンスストアなどで使える「共通ポイント」の導入も検討する。三菱商事系のロイヤリティマーケティング(東京・渋谷)が運営する「Ponta(ポンタ)」、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)系の「Tポイント」、楽天の「楽天スーパーポイント」の3陣営に月内に提携を打診する。それぞれ数千万人の顧客基盤を抱えている。
例えば消費者がほかの電力会社から乗り換えて東電と契約すれば、ポイントがもらえるサービスなどを展開する。東電の既存客向けにポイントを付与することも検討する。東日本大震災以降、原子力発電所の稼働停止などで電気料金が上昇しており、特典ポイントの導入で家計の負担感を和らげる狙いもある。
16年に家庭向けの電力小売りが完全自由化すると、首都圏など東電管内は異業種からの電力小売り参入で競争が激しくなるとみられる。異業種との提携で顧客を囲い込むことで、家庭や商店など東電が抱える約2700万件の小口契約を維持する狙いがある。東電はほかの電力会社の管内で電気を販売する「越境供給」にも乗り出す考えで、割安なサービスを提供して顧客を獲得する。
日本経済新聞 朝刊,2015/03/13,1面