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H2O・イズミヤ統合、相乗効果3つの課題、ポイントを共通化、きめ細かい店舗網、魅力ある商品展開。

2014.04.01

 エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングとイズミヤの経営統合が、両社が26日に開いた臨時株主総会で正式に承認された。これで売上高が1兆円に迫る関西最大の流通小売りグループが誕生するが、統合の相乗効果を発揮するには3つの課題を克服する必要がある。
 「『ええもん安い』が理念のイズミヤは、H2Oがカバーできない業種・業態を持っている。両社は戦略的に補完関係にある」。H2Oの椙岡俊一会長兼最高経営責任者(CEO)は株主総会で統合の意義を強調した。
 総会の出席者数はH2Oが約440人、イズミヤが約430人。開催時間はH2Oが100分、イズミヤが75分。両社合計で約30の質問が株主からあり、多くは株式の交換比率の妥当性についてだった。
 再編の果実を生む大きなカギは、両社合計で700万人になるカード会員へのサービス。会員分布をみるとH2Oは北摂・阪神間、イズミヤは京阪神から大阪南部に強みがあり、重複する地域は少ない。2府4県の世帯数に占めるカード会員数が50%を超す地域も多い。
 両社は買い物額に応じて付与するポイントを共通にし、百貨店やスーパーでも使えるようにする。またカードで分かる買い物履歴の情報は、店側にとって「宝の山」。イズミヤ顧客層を百貨店に引き込んだり、逆に百貨店の顧客層をイズミヤに誘導するなど、きめ細かい販促活動に役立てられる利点がある。
 約120あるイズミヤ店舗を中心とした改装・統廃合も課題だ。有利子負債が経営の重荷だったイズミヤは新規の投資が限られ、店舗の老朽化が目立っている。これらを早急に改装すれば地域住民の利用機会が増える可能性が高い。また閉店資金の工面にも苦労していたイズミヤにとり、統合は効率の悪い店舗を閉めるきっかけになる。
 一方でH2Oのスーパー「阪急オアシス」の出店投資は続け、今後は年8店程度を新規に出す。このペースでは現在の約70店が7年後には130弱になる。H2Oの森忠嗣取締役経営企画室長は総会で「梅田の大きな百貨店から郊外の小さな店まで京阪神でバランス良く拠点が持てる」と述べた。
 最後は魅力のある商品作りだ。イズミヤは総菜工場、魚・野菜の加工工場を持ち、H2Oにも総菜や製パンのグループ企業がある。こうした製造機能と、流行に敏感な消費者が集まる阪急うめだ本店の情報を結び付けると製造小売り(SPA)に磨きがかかる。大手スーパーやコンビニエンスストアにはない商品で違いを出せば、消費者を呼び込める。
 流通業界に詳しいコンサルティング会社、フロンティア・マネジメント(東京・千代田)の松岡真宏代表は「流通業界は業態の垣根を越えた異種格闘技のさなかにある。鉄道系百貨店と独立系スーパーの統合は今後の再編の先駆けとなり得る」と指摘している。
 
 
  日本経済新聞 地方経済面 近畿B,2014/03/27,10面