パナソニック、体験イベントに会員誘導――属性分析、事前にメール(戦略O2O)
2014.03.04
メーカーにとって、商品を消費者にじかに触れてもらうことは重要な販促手段だ。パナソニックは自社のインターネットの会員組織を生かし、商品の体験イベントへの誘客に力を入れ始めた。年齢や居住地域、興味のある商品分野など、会員の属性を分析して、適切な案内メールを事前に送る。効果も表れ始めている。
昨年11月、同社が大阪市で開いた「エコナビ『オドロキ!体感イベント』」。省エネ機能に優れた洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどに触れてもらうことを狙った。その中でピーク時は約150人が行列を作った一画があった。パナソニックの会員組織「クラブパナソニック」向けの抽選コーナーだ。
パナソニックは同イベントを開くにあたり、会員にあらかじめメール等でイベント情報を知らせ、発行したクーポンを提示した会員に記念品をわたした。さらに商品があたる抽選イベントも開いた。2日間でこのイベントに訪れた会員は数千人。全体の来場者の約3分の1を占めた。
メーカーが商品の街頭イベントを開くことは珍しくない。ただ来場者はたまたまその場所を通りかかった人が大半だ。一方、あらかじめ会員に告知しておけば体験することが目的になり後日、店舗で商品購入の可能性が高まる。パナソニックはこの点に着目し、2013年度から本格的にネットの会員組織を活用したO2O(オンライン・ツー・オフライン)の取り組みを始めた。大阪のイベントだけでなく、さっぽろ雪まつりのエアコン展示ブース、東京での炊飯器の体験企画でも会員組織を使った。
クラブパナソニックの立ち上げは07年。商品やサービスごとに分けていた会員サービスのIDを統一し、顧客情報管理(CRM)と販売・開発を連携した。会員向けサイトではゲームや家電の口コミ情報なども載せ、何度もアクセスしてもらえるようにして、自社商品の情報に誘導する。会員数は非公表だが「企業サイトとしては、国内有数のアクセス数がある」(CRM推進グループの荒木聖チームリーダー)という。「商品を知ってもらうだけでなく、触れてもらう機会をつくろう」(荒木氏)と発展させたのが体験イベントの実施だ。会員情報を登録してもらう際には年齢や居住地域、興味ある製品分野などを回答してもらっており、イベントにあわせた効果的な案内を送れるという。
今後の課題はO2Oで来た人の属性の分析とその活用だ。実は大阪のイベントなどで活用したクーポンによって、どんな人が来たのか会場でわかるそうだ。そうした情報をより精密に分析することで、O2Oの手法を磨いていく。
日経MJ(流通新聞),2014/02/28,3面