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Tポイントで常連客囲む、マルエツ、来店頻度で4分類、クーポン、的絞り来店促す。

2014.09.01

 食品スーパー大手のマルエツが、共通ポイントの「Tポイントカード」で集めた会員情報を販促や品ぞろえに活用している。同業に加えコンビニエンスストアなどとの競合が激しさを増す食品スーパーは、継続的に利用する「常連客」をいかに増やせるかが成長のカギとなる。マルエツは共通ポイントで集めた膨大なデータを基に常連客の囲い込みを急ぐ。
 マルエツは2013年2月に、大手スーパーとして初めて、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する共通ポイント、Tポイントを導入した。274のマルエツ全店でTポイントを利用する会員は月間250万人に達し、利用割合は売上総額の75%を占めている。
 13年9月にはカードの会員情報を分析するための専門部署として、MD情報活用推進部を設立した。同部の篠崎正幸部長は「店の利用頻度に応じた客の分類ができるのは、共通ポイントならでは」とTポイントの利点を説明する。
 食品スーパーは独自のポイントカードを発行している場合がほとんどだ。マルエツもTポイントの導入以前は、自社の店舗専用のポイントカードを発行していた。だが、利用店舗が限られる独自カードは「頻繁に店を訪れる客しか利用しないため、データに偏りが出る」(篠崎部長)という問題があった。
 共通ポイントなら、CCCの「TSUTAYA(ツタヤ)」など他店で発行したカードでも気軽に利用してもらえる。このため、来店などの頻度に応じた顧客層の分類が可能になった。
 マルエツでは1カ月あたりの来店回数や購入金額によって客を4つに分類した。月10回以上来店し、なおかつ月間1万3千円以上の買い物をする「ヘビー」に該当するのは、来店客の13%だが、売上高ベースでは46%を占めていた。「改めて常連客が売り上げを支えてくれていることを痛感した」(同)
 ポイントカードで集めた客の年齢や購入履歴といった情報は、さっそく常連客を囲い込むための商品開発に生かされている。
 プライベートブランド(PB=自主企画)商品で4月に発売した高級アイス「プレモ」はその一例だ。常連客の多くが高級アイスを多く購入していることが分かり、高級アイスをPBで発売することを決めた。反響は常連客を中心にリピート購入率が他の商品に比べて高く、アイス売り場の顔として定着させることに成功したという。
 店頭の品ぞろえにもデータを生かす。ある店舗で、おにぎりの販売が他店に比べて不調だった。従来通り販売データを参考に品ぞろえを判断していれば、取り扱いを減らしてもおかしくなかった。ところが利用頻度別に購入者を分析したところ、おにぎりを購入していたのはほとんどが常連客だった。「常連客が好む商品を撤去してしまうと、客離れにつながる」と、販売継続を決めた。
 常連客の育成も進めている。「ヘビー」より利用頻度の低い「ミドル」「ライト」の分類に該当する客が買い物をした際にクーポン券を発行している。不特定多数に対して発行するのに比べて効率的で、費用対効果も検証しやすいという。
 マルエツの主要な出店立地である首都圏では、イオンの小型スーパー「まいばすけっと」やコンビニの出店が加速し、競合は激しさを増している。「顧客情報の活用はまだ始まったばかり。マルエツファンを増やすことで安定した集客を維持していきたい」(篠崎部長)と意気込んでいる。
 
 
  日経産業新聞,2014/08/25,7面