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書店、電子書籍と共存探る、紙の書籍・雑誌市場、ピーク比34.5%減――三省堂、文教堂。

2014.01.15

 書店各社が店頭での電子書籍の取り扱いに動き出した。三省堂書店は店内に電子書籍売り場を設け、売り場のバーコードから購入できるようにした。文教堂は雑誌を購入すると、同じ内容の電子データを付与する。米アマゾンが日本で電子書籍端末を発売してから1年強。電子書籍市場は急成長しているが、紙の書籍・雑誌市場はピーク時の3分の2まで縮小、書店店舗数も減少を続けている。各社は電子書籍を「敵」ではなく、売り上げ増につなげる手段として活用することで店の価値を高めようとしている。
 三省堂書店は11月末、神保町本店(東京・千代田)の1階に「電子書籍売り場」を設置した。棚に陳列したカードには、本の表紙が印刷され、裏にはバーコード。レジに持参して料金を支払うと、12けたのパスコードが印刷されたレシートを渡される。
 購入客はインターネットの電子書籍ストア「ブックライブ」上でパスコードを入力すると、書籍が読める。ブックライブは23万タイトルと、国内最大級の品ぞろえ。店の検索端末を使えば、ブックライブ上のすべての電子書籍が店頭で購入できる。代金の一定割合が三省堂に入る仕組みだ。
 文教堂グループホールディングスは今月、店で雑誌を購入した人に、雑誌と同じ内容の電子データを付与するサービス「空飛ぶ本棚」を始めた。
 対象雑誌を買った人にユニークコードがついたしおりを手渡す。購入客はアプリ「空飛ぶ本棚」をスマートフォン(スマホ)などにダウンロードし、アプリ上でユニークコードを入力すれば、雑誌のデジタルコンテンツを見ることができる。
 ファッションや家電では、店頭で商品を下見し、ネットで買う「ショールーミング」が広がっている。重い商品を持ち帰らなくて済み、ネットで安い商品を探せるからだ。電子書籍の場合は、自宅で置き場所に困らないという利点もあり、市場は拡大を続けている。インプレスビジネスメディアの調べでは、2013年度は930億円(予測)。14年度は1250億円を見込む。
 ただ現時点では、売上高に占める電子書籍の割合はごくわずか。講談社の「スティーブ・ジョブズ」や、半沢直樹シリーズの「ロスジェネの逆襲」(ダイヤモンド社)も、電子書籍の販売部数は「全体の5%程度」(出版関係者)といわれる。
 東野圭吾氏や百田尚樹氏など、一部の人気作家が電子書籍版を刊行していないことが、市場の拡大にブレーキをかけている側面もある。
 今後は、電子書籍利用者が多いマンガを足がかりに、持ち運びの利便性などをいかに読者に訴えるかが、市場の拡大スピードを左右するだろう。
 一方、出版科学研究所(東京・新宿)の調べでは、12年の紙の書籍と雑誌の市場規模は1兆7398億円で、2兆6563億円だった96年のピークから34・5%縮小した。
 足並みをそろえるように、書店店舗数も減少を続けている。調査会社アルメディア(東京・豊島)によると、13年5月時点の書店店舗数は1万4241店。5年間で2100店以上減少した。
 文教堂や三省堂のように大手でなくとも、電子書籍と共存していく手段はあるはずだ。実店舗の強みは、店頭販促(POP)や品ぞろえで「本との出会い」を演出できる点にある。そこに、手軽に電子書籍を買える仕組みをうまくからめ店での決済につなげられたら、電子書籍の市場拡大に加え、書店の生き残りにもつながっていくだろう。

日経MJ(流通新聞),2013/12/23,17面