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宝探し、顧客発見、ラッシュジャパンの企画、企業が注目、活用イベント開催が盛んに、「ついで消費」期待。

2013.11.30

 イベント企画のラッシュジャパン(東京・江東)が手掛ける「宝探し」イベントが注目を集めている。親子で楽しめ集客力が高まるのはもちろん、参加者がお宝を求めて歩き回り、ついで買いも期待できるためだ。2013年度の開催件数は過去最多に上る見込み。複数の施設での共同開催に協力したり、宿泊施設でも実施したり、事業の幅も広げている。
 東京都武蔵野市のシティーホテル「吉祥寺第一ホテル」に今夏、一風変わった宿泊プランが登場した。これまで縁遠かったゲーム好きの顧客に足を運んでもらうため、ラッシュジャパンと組み、宝探しイベントをセットにした。
 参加者に地図を渡し、そこに書かれた謎を解きながら、施設内に隠された宝物を見つける宝探し。内容はシンプルだが、開催場所の様々な場所に人々を誘導できるうえ、質問を投げかけるなど従業員などと会話するきっかけになり、企業と顧客の距離を縮めることが可能になる。
 吉祥寺第一ホテルでは午後8時までにチェックインし、ホテル内にあるヒントをもとに謎解きに挑戦してもらった。翌朝部屋のドアノブにかけられた新聞に解答が書き込まれており、朝食をとりながら答え合わせ。1泊2日(朝食付き)の料金は2人1室1万1400円で、参加者の評判は上々だったという。
 渋谷駅(東京・渋谷)周辺に点在している渋谷ヒカリエ、東急百貨店、東急百貨店東横店の今春の3施設共催宝探し「シブヤ×リアル×ナゾトキ」にもラッシュジャパンは協力している。ゲーム内容は施設ごとに異なるが、どれも地図を持って各フロアを回りながらゴールにたどり着いていく仕組みで、無事たどり着けばガムやノートなどの景品を贈った。
 商業施設が狙うのはついで買いやふとした立ち寄りだ。売り上げを単純に算出することは難しいが、ラッシュジャパンの斉藤多可志社長によると「滞在時間が延び飲食店などに足を運ぶ人が目立った」という。参加人数は3施設で計4900人以上だったそうだ。
 ユニークな試みで新規顧客開拓や施設内の売り上げ増が期待できるとあって、ラッシュジャパンへの開催要請は年々増えている。12月に商業施設「オリナス」(東京・墨田)が2日間の日程で宝探しイベントを開くほか、同じ12月には町田駅(東京都町田市)周辺の商業施設9カ所が連携してイベントを予定。
 12年度の開催件数は前年度を3割上回る約83件で、80万人以上の参加者を集めた。今年度の開催は120件と過去最多の更新を見込む。
 親子でも参加できるよう敷居は低いが、大人も本気で楽しめるように、ゴールまでたどり着ける比率は約2割と低めに設定している。最近は密室からの脱出ゲームも考案する企業もある中で、チームで様々な課題を乗り越える体験が味わえる要素を加えて、若者らの支持を集めている。飽きさせない工夫でリピート客を取り込む戦略だ。
 かつては企業の社員研修や町おこしのために開かれてきた宝探しイベント。利用シーンが広がることで、幅広い事業者の集客策として重要性を増しそうだ。

    日経産業新聞,2013/11/26,15面