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電力小売り4月から全面自由化特集――新電力セット割厚く、ガス、通信、ガソリン、賢く選ぶ、大口向け、大手が対抗プラン。

2016.02.15

 4月に電力小売りが全面自由化される。これまで家庭向け電力販売は東京電力や関西電力など電力大手10社が独占してきたが、ガス会社や携帯電話会社などが相次ぎ参入。料金プランも電気とガス、携帯電話とのセット割引やポイントサービス、時間帯別料金など多様化している。消費者にとって好みの購入先や自分の生活スタイルに合ったメニューを選べるようになる。
 参入のため新規小売電気事業者(新電力)に登録した企業数は170社ほどとなった。毎日使う電気がこれからは電力大手以外からも買えるようになる。電力販売を手掛けたことがなかった異業種企業も多く、これまでなかったサービスや現在の電力料金よりも安いプランを充実させている。
 魅力の一つが「セット割」だ。ガスや電話代など毎月支払う料金とまとめることで割安になるというものだ。例えば東京ガスは都市ガスと電気をセットで契約すれば年間3千円値引きする。さらにインターネット契約も組み合わせれば合計で年間2万円以上安くなるプランも用意している。大阪ガスもガスとのセット割引で1%安、2年契約の長期割引で2%安となる。
 携帯電話会社も電話料金の支払いと連動させたプランをつくった。東電と提携するソフトバンクは電気使用量が多くなると現在の電気料金より割安になる。月間使用量が300キロワット時より少ない場合でも携帯電話の通信に使えるデータ量を増やして還元する。KDDIも電気料金に応じ、1~5%相当分を買い物などで使えるカードに充当する。
 ガソリン代の値引きと組み合わせたプランもある。車を運転することが多い人にはメリットが大きい。JXエネルギーは電気使用量が多い場合には使用量単価が現在の東電よりも14%安い。JX系のクレジットカードで料金を支払えばガソリンや軽油代も1リットル当たり1円値引く。昭和シェル石油は電気代は現在の東電とほとんど同じだが、ガソリン代は1リットル当たり10円引きとなる。新規参入組は自社事業の顧客拡大にもつなげようと「二兎(にと)」を追う構えだ。
 顧客を奪われるのを防ごうと電力大手も新プランを相次ぎ打ち出している。東電は月間料金が1万7千円以上の世帯を対象に割安なプランをつくった。3月までに2年契約をすると1万2千円相当のポイントを付与する特典も用意。中部電力は電気料金の支払いに使えるポイントサービスを始める。関電や東北電力などは時間帯別で料金が違う新プランをつくり、夜間に電気を多く使う世帯などが割安になるようにした。
 中国電力は中国地域の小売店や銀行、広島東洋カープと連携してポイントがたまる仕組みを始める。北陸電力は節電に協力すると割引になるユニークなプランを用意した。
 電力大手の中ではこれまで地盤としていた地域以外での販売を始める企業も出ている。中部電力は首都圏で電力小売りを開始。使用量の多い世帯では東電の従来プランと比べ5%安くなる場合もある。東電もソフトバンクと連携し、関西や中部エリアで販売する。
 もっとも各社の新プランは家族が多い世帯や、ペットを飼っている世帯など電気使用量が比較的多いほど割安になることが多い。一人暮らしなど電気使用量が少ない場合、現行の料金プランの方が安いこともあるため注意が必要だ。
 
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/02/10,ページ:16