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電力自由化半年、切り替え3%、少量利用者は「想定以上」、調査会社、プランの充実課題。

2016.10.24

 電力小売りが4月から全面自由化され、半年が経過した。電力広域的運営推進機関によると、電力会社を切り替えたのは9月末時点で約3%にとどまる。どんな世帯が、なぜ切り替えたのか。あるいは、なぜ切り替えなかったのか。複数の調査会社の分析から、消費者の動向が垣間見える。
 「使用量が少ない世帯が想定以上に切り替えたのではないか」
 低調といわれる自由化商戦。「3%」の内訳について、PwCコンサルティング(東京・千代田)はこう分析する。電力契約を変更した消費者99人を対象に8月下旬に意識調査を実施した。
 調査結果によると、平均の月額料金が5000円未満だった世帯は21%、5000円~8000円未満は36%だった。
 大半の新電力は、契約電力が40アンペア以上と使用量が多い世帯ほど割安になるプランを用意している。5000円未満だと恩恵を受けにくいため、当初予想では「使用量が多い世帯ほど切り替えが進む」とみられていた。
 一方、変更したきっかけ(複数回答)を聞くと、53%が「旧契約先の電力料金が高い」と回答。「新契約先の料金が安い」も39%に上り、電気代の節約が最も大きい動機であることを裏付けた。
 また、「新契約先のポイント還元」が24%、4番目に「旧契約先の原子力発電所への対応に不満がある」が17%に上った。PwCは「ポイント還元と原発への考え方が切り替えのカギを握っていた」と分析する。
 一概には言えないが、そうした感度の高い層が、使用量が少ない、例えば若者や単身世帯に多かったのかもしれない。
 PwCは電力会社を切り替えていない1100人にも意識調査を実施している。そのうち、変更の検討をしなかった消費者は61%に上った。検討したものの変更しなかったのは23%。変更しなかった理由は「様子見」「判断できるだけの情報がない」「料金が安くならない」が続いた。
 PwCが2015年に行った消費者調査では95・4%の回答者が、自由化されたら電力会社の変更を検討したいと答えていたという。同社は「実際には検討したいと思う魅力的なプランがなかった」と分析している。
 様子見の消費者が多いのは、料金比較サイトのエネチェンジ(東京・墨田)が7月に行ったアンケートでも浮かび上がった。エネチェンジのサイトを使って検討したが切り替えなかった239人に理由を尋ねたところ、7割がしばらく様子を見たかったと回答。期待したより安くならないは29%だった。
 一方、三菱総合研究所が6月に実施した消費者調査では、電力会社の変更を検討しない理由は「あまり安くならなそう」がトップ。「切り替えの手続きが面倒」「切り替え後どれほど料金が変わるかわからないから」と続いた。エネチェンジは様子見の消費者などに切り替えてもらうには「何かしらの強いきっかけが必要だ」と指摘する。
 PwCも「保守的なメニューが多いことが切り替えが低調な理由の一つ」とみる。加えて、電力自由化への関心を高めるには、ある曜日や時間帯だけ電気料金を安くするなど、「顧客の利用状況をきめ細かく分析したユニークなプランの打ち出しが必要」とも指摘する。そうしたメニューの特性を、どんな層に、どう訴えるのか。新電力各社の営業戦略が問われている。
 
 日経産業新聞,2016/10/21,ページ:11