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仮想通貨とルール(5)電子マネーとの違い―発行主体なく価値変動。

2016.01.25

 仮想通貨は電子マネーとどこがどう違うのか。利用者から見ればどちらも電子データであり、区別がつきにくい。法律は支払い手段の特性に応じて、規制の内容を変えている。
 駅や小売店などで使える電子マネーは現金や預金と引き換えに発行される。資金決済法は事業者を登録制にし、破綻時に備え事業者に未使用残高の2分の1を供託させ、利用者の資産を守っている。一方、仮想通貨は供託しても価値が変動するため、供託による規制は見送られる見通しだ。
 資金決済法は電子マネーから金銭への払い戻しも禁じている。金融機関以外が客から金を預かることを禁じた出資法の預かり金規制や、現金を輸送せずに送金する、銀行の為替取引に抵触するのを防ぐ措置だ。
 電子マネーは利用する場所が特定されるため、預かり金規制や為替取引に触れないとされる。だが「一般的な払い戻しを認めると利用方法の制限が外れ、為替取引と違わなくなってしまう」(斎藤創弁護士)。一方、ビットコインは企業が発行する電子マネーと違って発行主体がなく、こうした規制が難しい。現実に取引所で自由に換金できるほか、価値が変動するため「資金を移動した」とも言いにくい。
 価値の源泉も違う。電子マネーは消費者が発行企業の信用力を考えて、使うかどうかを判断する。国や中央銀行が発行する円などの法定通貨が、国家の信用力を裏付けにしているのと似ている。「電子マネーはお金の形態が紙幣や硬貨から電子情報に変わっただけ」(遠藤元一弁護士)とも言える。他方、プログラムに従って自動的に発行されるビットコインは、量に限りがあることに希少性を認める人が売買している。
 航空会社などによる企業のポイントサービスは、会社が販促費などを原資に提供する「おまけ」だ。このため法的な規制はない。
 政府は資金決済法に「通貨の類似商品」という新分類を設け、600種類以上あるといわれる仮想通貨を規制する方針。電子マネーなどと区別しつつ、多種多様な仮想通貨をどう束ねて規制するのか。難しい法改正になりそうだ。
 
 
  日本経済新聞 朝刊,2016/01/25,ページ:15