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住宅ローン金利外で競う―買い物割引、レジャー施設優待(M&I)

2016.10.13

 日銀によるマイナス金利政策の導入で、住宅ローンの金利が低下したことで借り換えを検討している人も多いだろう。ただ10年固定型の金利が年1%を割り込むなど、引き下げ競争は限界に近づきつつある。このような状況から、一部の金融機関はローン金利以外の付随サービスを拡充する動きを強めている。自分の生活に役立つなら検討してみる価値がある。
 住宅金融支援機構の長期固定型住宅ローン「フラット35」の取り扱いが最も多いアルヒは、契約者向けサービス「ARUHIメンバーズクラブ」を運営する。提携企業の商品やサービスを割安な価格で提供する。
 8月にはローソンのネットスーパーを安く利用できる優待を始めた。このサービスは月500円の利用料が必要だが、毎月4回まで配送料が無料になり、月2000円の割引クーポンも付く。
メガ銀と差異化
 9月にはアートコーポレーションやダスキンなど8社と提携。引っ越しや掃除の料金割引などの特典も受けられるようになった。アルヒは「金利競争ではなく契約後もサービスが受けられることをPRしてメガバンクなどと差異化したい」(コーポレートコミュニケーション部)という。
 同様にスーパーでの優待があるのがイオン銀行の「イオンセレクトクラブ」だ。住宅ローンを借りることに加え、クレジットカードの「イオンカードセレクト」を契約すればイオングループでの買い物が毎日5%安くなる。
 イオンの店舗に加えネットスーパーやミニスーパー「まいばすけっと」などでカードを使って買い物をすると代金が5%割り引かれる。借入金額が1000万円以上2000万円未満だと年45万円、2000万円以上だと同90万円まで優待を受けられる。「買い物にイオンを使う若い主婦層の人気が高い」(イオンフィナンシャルサービスの経営企画部)という。近所にイオン系列のスーパーがある人には大きな利点となる。
ポイントを付与
 新生銀行は3日から住宅ローンの特典に共通ポイントの一つであるTポイントを付与するサービスを始めた。毎月1000ポイントを最長10年間受け取れる。住宅ローンの借入期間が20年以上、金額が2000万円以上のTポイント会員が対象になる。繰り上げ返済をした場合は、その時点でTポイントの付与は終了する。
 埼玉りそな銀行では住宅ローンの月末残高に応じて100万円ごとに5ポイントの「埼玉りそなクラブポイント」を付与している。同行と提携するJR東日本のSuica(スイカ)や楽天の楽天スーパーポイントなどのポイントに交換できるほか、1000ポイントで700円の現金にも交換できる。静岡県のスルガ銀行の「マイル付き住宅ローン」も残高に応じ提携する全日本空輸(ANA)のマイルを受け取ることができる。
 地銀では横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、茨城県が地盤の常陽銀行、長野県の八十二銀行などが法人向け福利厚生代行会社リロクラブ(東京・新宿)と提携しており、住宅ローンを契約すれば国内外のレジャー施設や温泉などが優待価格で利用できる。
 長野県信用農業協同組合連合会(長野市)は5月から住宅ローンを契約すれば、同県産の特産品や旅行券などがもらえるキャンペーンを展開。ただし同県在住で、同JAの准組合員などになる必要がある。
 東京スター銀行は住宅ローンの借り入れ残高から預金残高を差し引き、この金額に金利が適用される商品を扱っている。たとえば住宅ローン残高が3000万円ある一方、預金残高が1000万円ある人は、2000万円分にしか金利が適用されない。
 これまでは適用金利が高く、契約に二の足を踏む人が多かったが、適用金利を下げて利用しやすくした。「マイナス金利で預金金利が低下する中で、預金するメリットも感じてもらえる」(同行)という。
 金利以外の特典などは金融市場の動向などを気にせずに利用できるものが多い。一方、どれくらい恩恵を受けられるかは利用状況などによって大きく異なる。住宅ローン金利の水準と付随サービスの内容を総合的に判断することが大切だ。
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/10/08,ページ:20