ニュース拡大鏡/三菱商事、家庭向け電力小売りで攻勢-“お得感”で顧客開拓
2016.10.03
■あすから値下げ、切り替え促す
三菱商事が家庭向け電力小売り事業で攻勢をかける。ローソンと共同出資する新電力のMCリテールエナジー(東京都港区、松永典生社長、03・6435・7256)が29日、10月1日から電力料金を引き下げるほか、期間限定のキャンペーンを実施すると発表した。4月に電力小売りが全面自由化されて以降、大手電力から新電力への切り替えが伸び悩む中、安さと“お得感”を訴求し、顧客の維持・獲得につなげる。(土井俊)
MCリテールエナジーは新料金の基本料金を据え置いた一方で、電力使用量が月121キロワット時以上の単価を従来比4%以上引き下げた。月301キロワット時以上を使った場合、東京電力と比べて13・4%安くなる。また、コンビニエンスストアや飲食店などで使える共通ポイント「Ponta(ポンタ)」の配布キャンペーンも実施。11月30日までに電力サービスを申し込んだ顧客に対して、最大5000ポイントを提供する。
MCリテールは4月に電力サービス「まちエネ」を開始し、ローソンで使えるクーポンやポンタポイントを配布し、差別化を図ってきた。今回値下げに踏み切った背景には、電力小売り全面自由化の動きの鈍さが挙げられる。新電力各社は、エアコンなどの電力消費が増える夏場が顧客獲得の機会と捉え、値下げする動きが相次いだ。しかし、4―8月末の大手電力会社から新電力への切り替え件数は167万5100件と、自由化の全対象件数の約2・7%にとどまっている。
MCリテールも7月に、8月の電力料金が半額になるキャンペーンを実施したものの、「思ったより反応は薄かった」(松永典生社長)。事前の割引告知では、消費者がどれだけ電力料金が高くなるのかわからなかったことが要因だ。そこで実際に、検針票を通じて8月以降の電力料金を確認できる10月から値下げを実施することで、顧客獲得を狙う。
各社のサービス競争が激化する一方で、新電力への切り替えが一気に進む気配はまだない。松永社長は、本格的に動き始めるのは「おそらく1―2年はかかるのではないか」と予想する。
同社はサービス内容の充実だけでなく営業体制も強化し、「徐々に顧客を増やしていく」方針だ。既に複数の液化石油ガス(LPG)販売会社と提携し、LPGの営業担当者が客先にまちエネの提案を始めている。今後は他の業種とも協業を検討し、販売網を広げていく考えだ。
日刊工業新聞,2016/09/30,ページ:20