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楽天、個人間取引に照準、フリマアプリ「フリル」を買収、女性・若者を開拓。

2016.09.05

 楽天はインターネットで衣料品などを個人間で売買する「フリーマーケットアプリ」大手のファブリック(東京・渋谷)を買収する。パソコンよりもスマートフォン(スマホ)を使う若者や女性を中心にフリマアプリの利用が急増している。買収を機に自社サービスとの連携を進め、ネットビジネスのなかでも伸びが目立つ市場でシェア拡大を狙う。
 フリマアプリ「フリル」を展開するファブリックの全株を経営陣などから近く取得する。取得額は数十億円の見通し。同社は楽天の完全子会社の形で存続させる。
 スマホ用のアプリで顧客を増やしてきたフリルは10~20代の女性の利用が中心で、ファッションや美容関連の出品が多い。アクセサリーなどを手作りして出品する個人や中小事業者も利用している。
 フリマアプリでは最大手のメルカリが月間流通総額で100億円規模と「1強」の状態だ。楽天もフリマアプリ「ラクマ」を2014年から展開してきたが、女性や若年層の顧客獲得が不十分だった。楽天はファブリックの買収により同市場で2~3位の「フリル」「ラクマ」を連携して展開できるようになり、流通総額を合計で同30億円程度まで増やせる見込み。
 「ラクマ」は家電などの高価格帯商品に強みがあり利用者も30代以上が多い。異なる顧客層を合わせることで、商品領域の幅を広げる。アクセサリーをつくる中小事業者が楽天市場に商品を出品するといった効果も期待する。年内にもフリルで楽天の会員IDや共通ポイントも使えるようにして利用を促す。
 衣料品やバッグなどの出品が多いフリルは色などで商品を識別する技術に強みがある。例えば商品画像のデータをもとに赤、ピンクなど色を自動的に判別し、データベースに蓄積している。こうした技術を楽天は導入し、消費者が好みの商品を検索しやすくする。
 楽天の16年1~6月期の連結業績(国際会計基準)は営業利益が前年同期比12%減の487億円と減益に転じた。主力の電子商取引事業が伸び悩んでいることが響いた。
 楽天は苦戦する東南アジアや欧州の大半でネット通販から相次ぎ撤退。日本国内でもネットオークション事業を10月に終了する。ネットを使った物販事業は楽天市場とフリマアプリに重点投資し、顧客の上積みを狙う。
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/09/03,ページ:11