CCC、会員カード管理アプリ――さようなら、かさばる財布(戦略ネットBiz)
2016.08.29
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、財布内にあるたくさんの会員カードを1つにまとめられるスマートフォン(スマホ)アプリ「スマホサイフ」の普及に力を入れている。同社の主力事業である「Tポイント」を導入しにくい企業などに採用を働きかける。Tポイントとスマホサイフの二段構えで「CCC経済圏」を広げる狙いだ。
「(Tポイントに移行するよりも)自社で運営しているポイントプログラムを続けたいという企業は少なからずいる。こうした企業にスマホサイフをすすめたい」。CCCマーケティングの渡辺朗執行役員は力を込める。
CCCは7月、無料のスマホアプリ「スマホサイフ」の提供を始めた。消費者はスマホにアプリをダウンロード。会計時にスマホを読み取り機にかざす、画面にQRコードなどを表示しレジで読み取ってもらうといった方法で、ポイントをためたり使ったりできる。
財布の中にあるポイントカードやスタンプカードなどをアプリにまとめられる。消費者は企業が発行する各種カードを持ち歩かずに済み、かさばっていた財布をすっきりさせられる。
まずモスフードサービスが7月に、自社のプリペイドカードのポイント管理や決済の機能を代用できるようにした。8月にカジュアル衣料店のライトオンとイーグルリテイリング(東京・渋谷)、10月にCCC傘下でCD・DVD貸し出しのTSUTAYAが参加する。小売りやカード会社などに採用を働きかけ、5年後に数百社を集める考えだ。
CCCの主力事業のTポイントは7月末時点で156社の約56万店で使え、1年以内に利用した会員数(重複を除く)は6000万人弱に達する。企業をまたいで複数の店舗でポイントをためたり、商品やサービスの代金を支払ったりできることが売りだ。
一方で、システムの利用料やポイントの発行でコストはかさむ。自社ポイントを運用している企業が、Tポイントに移行するのは簡単ではない。三菱商事系の「Ponta(ポンタ)」や楽天の「楽天スーパーポイント」、NTTドコモの「dポイント」など競合も台頭し、業種によっては新規開拓の余地が狭まっていることも事実だ。
スマホサイフであれば、Tポイントよりも手軽に始められる。企業の負担額はID発行やシステムの運用コストなどで年間数百万円からの見込み。自社のポイントプログラムを続けながら、スマホサイフというプラットフォームに乗れる。
アプリでカード残高や商品の購入履歴が管理できるほか、好きな店やブランドの割引クーポンやセール情報を受け取ることも可能だ。「スマホ1台であらゆる会計時の処理ができるようにしたい」(渡辺執行役員)。
CCCは「企画会社」(増田宗昭社長)を自認する。自ら商品やサービスを開発することはなるべくせず、プラットフォームやアイデアを企業に売るという意味だ。
その代表例がTポイントといえる。Tポイントが他社に先がけて日本で共通ポイント市場を切り開いたように、スマホアプリも他社に先行できるか。
(山端宏実)
日経MJ(流通新聞),2016/08/24,ページ:7