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楽天モデル、曲がり角、営業益、1-6月12%減、「配送」「口コミ」新潮流に乗れず(ビジネスTODAY)

2016.08.08

 楽天の事業モデルが曲がり角に来ている。主力のインターネット通販で配送の便利さや口コミを重視する消費者の新潮流を捉えきれていない。米アマゾン・ドット・コムや新興勢力の台頭を許し、成長が頭打ちになった。創業20年目の「老舗」企業はイノベーションの停滞も目立つ。このままでは成長市場で取り残されかねない。
 4日発表した2016年1~6月期の連結業績(国際会計基準)は営業利益が前年同期比12%減の487億円と減益に転じた。電子商取引(EC)事業は4~6月の売上高が7%増の725億円、営業利益が25%減の175億円と利益面で足を引っ張る。三木谷浩史社長はEC事業で年4割の成長を社内で厳命していたが、旅行などを含まない「楽天市場」単体では今や横ばいとみられる。
 楽天は店舗が自由にサイトを構築できるモール型で、出店者に場所貸しをする大家のような存在。日本のネット通販を発展させた立役者だ。
 三木谷社長はネット通販を軸にフリーマーケットやオークション、旅行にも参入し「楽天経済圏」を広げようとしてきた。だがネット通販以外は多くが他社の後追いで新味が薄く、相乗効果を発揮しているとは言い難い。カブドットコム証券の河合達憲投資ストラテジストは「規模が大きくなり消費者の変化への対応が遅れた」と競争力が低下した理由を分析する。
 主役の座を奪ったのがアマゾンだ。調査会社によるとすでに利用者数で楽天を上回った。消費者に合った商品を提案する機能や送料無料化、配送時間指定をいち早く始めてニーズを捉えた。アマゾンが商品をいったん買い取ってから販売するため価格やサービスを統一しやすい。この点で、管理を店舗に任せる楽天は消費者から「検索ワードと違う商品もでてきて精度が低い」「店ごとに送料が違いわかりにくい」といった不満が多い。
 アマゾンだけではない。出店料を無料にして店舗を増やしているヤフーのほか、安い商品や中古品を消費者同士が売り買いするメルカリが急成長。世界ではフェイスブックやインスタグラムで人気タレントが紹介した商品を選ぶ潮流が広がっている。楽天はここでも乗り遅れ、東南アジアや欧州で撤退した。
 ある出店企業幹部は「楽天は守りに徹する雰囲気があり、失敗しても他社にはない新サービスを生もうという気概がみられない」という。
 劣勢が目立つECのてこ入れへ向けて打ち出したのが、共通ポイントの大盤振る舞いだ。例えば楽天カードで買った人は通常の4倍もらえる。グループのサービスを使うほど特典が得られるようにした。4日には音楽の定額制聴き放題サービスを始めると発表した。9月から消費者への対応が悪い店舗を減点し、一定の点数に達すればネット通販からの“退場”を促す制度を始める。店舗の質を高める狙いだ。
 「感動あふれるECをつくっていきたい」と言い、最近「グローバルイノベーション企業」になるという理念を掲げた三木谷社長。忘れていた革新を取り戻さなければ、栄枯盛衰が激しいネット市場で再び輝くのは難しい。
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/08/05,ページ:11