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関電、ファミリー層に割安プラン、流出防止へ苦肉の策、全体値下げ、原発再稼働後。

2016.08.01

 関西電力は27日、10月から家庭向けの新料金プランを導入すると発表した。主にファミリー層の電気代が安くなる。背景には4月の電力小売りの自由化後に大阪ガスなどの新規参入企業に顧客を奪われ続けていることへの焦りがある。関電では顧客全体への値下げは原子力発電所の再稼働後としており、今回は特に新電力などに奪われた層に絞って割安感を打ち出し、つなぎとめる窮余の策といえそうだ。
 28日から受け付けを始める新プラン「eおとくプラン」は主に使用量が月300~600キロワット時の家庭で割安になる。標準的な3人世帯(月350キロワット時)の場合、月の電気代は約3%、およそ300円安くなる。単純比較はできないが、大ガスはガスと電気のセット割引(単年契約)で関電より最大3%安くなると打ち出している。
 新プランは基本料金に加えて、使用量に応じて1キロワット時ごとに課金。従来の「従量電灯A」と比べると、基本料は割高になるが、従量部の課金額を1~7円ほど安くした。使用量が月266キロワット時を超すと得になる。
 月350キロワット時の場合、同社のポイントサービスに加入すれば、年間で約1100円相当のポイントがたまる。2017年3月までにさらに1%引き、ポイント込みで初年度は割引幅が合計5000円程度になるという。今後、ポイントを電気代の支払いに充てられるようにもする。
 27日、記者会見した香川次朗副社長は「使用量が多い世帯が(自由化後の)主戦場になる」と話した。関電管内では4月以降、大ガスの約15万件をはじめ、計26万件以上の顧客が関電から切り替えた。全体に占める割合は2%だが、離脱件数は首都圏に次いで多く、八木誠会長は4月の記者会見で「料金面で後れをとっている」と危機感をあらわにしていた。
 関電では切り替えが多いと分析した3~4人世帯の家庭に値下げのメニューを用意した形だが、本格的な料金引き下げについて香川副社長は「値下げは原発再稼働後に検討する」と強調した。
 そもそも関電は収益改善効果が1カ月約100億円と試算する高浜3、4号機(福井県)に加え、大飯原発(同)も再稼働させて値下げの原資とし、電力自由化後の競争力の確保を図る戦略を描いていた。しかし大津地方裁判所の決定などで「原発ゼロ」の状況が続く。
 高浜3、4号機の再稼働を巡る裁判は大津地裁から大阪高等裁判所に移ったが、再稼働禁止の仮処分決定に対する関電側の執行停止の申し立てについての判断は早くても今秋以降になる。また大飯3、4号機についても年度内の再稼働を目指すが、現在は原子力規制委員会の審査中だ。再稼働後に値下げの実現にはなお時間がかかりそうだ。
 香川副社長は記者会見で来年4月からの家庭向けガスの全面自由化に参入すると改めて表明。「総合エネルギー会社としてガスと電気のセット販売など、魅力のあるメニューを提供する」と強調した。
 
 日本経済新聞 地方経済面 近畿B,2016/07/28,ページ:10