乗り換え100万件、「選べる電力」様子見、全体の1.7%止まり、物足りない魅力。
2016.06.13
4月の電力小売りの全面自由化から2カ月が経過した。制度上は、どこから買うか消費者が「選べる商品」になった電力だが、消費者をひきつける魅力の面では、まだ「選ばれる商品」にはなりきれていないようだ。
経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関は3日、家庭などの電気契約が新しい電力会社に切り替わった件数は5月31日時点で103万5500件だったと発表した。一見、大きな数字のように思えるが、全体に占める割合からみれば約1・7%にとどまる。都内在住のある主婦は「もう少し様子をみてみたい」と話す。
経産省に小売事業者として登録された新電力は約300社に達しているが、料金比較サイトなどによると、実際に売り始めた会社は50社程度とみられる。今後さらに魅力的なメニューが出てくるかもしれないし、参入済みの新電力もさらに割安なプランを追加する可能性がある。
都市ガスと原子力発電所の動向も気になるところだ。来年4月には電力と同様、都市ガスの小売りも自由化される。その際には、電気と都市ガスのセットでもっと割安なプランが出てくるかもしれない。全国の原子力発電所は東日本大震災後、大半が運転を停止したままだが、再稼働が進めば大手電力には値下げ余地が生まれる。
新電力の料金は確かに安いが、月に数百円程度の節約なら急ぐ必要はない。新電力各社はひとまず100万件の契約をつかんだが、この先は新たな施策が必要だ。自由化で先行する欧米では、新電力が随時、新メニューを追加して販促キャンペーンを展開。消費者がウェブ経由で定期的に電力会社を切り替える行動が普通になっている地域もあるという。
規制時代には必要がなかったマーケティングに知恵を絞り、消費者をひき付けるサービスを打ち出せるか。電気が「普通の商品」になるには、まだまだ工夫が必要だ。
日経産業新聞,2016/06/06,ページ:3