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ネット銀、大手行と使い分け、ポイント付与、証券連携も(M&I)

2016.01.18

 インターネット専業銀行を利用する人が増えている。預金金利が一般的に大手銀行に比べ高いのに加え、最近は特徴のあるサービスを強化するネット銀行が相次ぎ、大手銀行と口座を使い分ければ家計運営や資産形成に役立てることもできるからだ。ただセキュリティー対策は欠かせないなど注意点もある。
 「金利の高さが決め手になった」。都内に住む会社員Aさん(38)はソニー銀行に定期預金を預けた理由をこう語る。1000万円の1年物で金利は年0・25%(税引き前)。給与が振り込まれるみずほ銀行で定期預金にすることも考えたが、金利は店頭で年0・025%だった。インターネットで金利の高いところを探し、ソニー銀を選んだ。 残高、9倍に拡大
 生活費など日常的な出費は、みずほ銀の口座を利用する。「会社や自宅の近くにATMがあって便利」だからだ。ATMの無料利用に回数制限があるネット銀行は貯蓄用として使い分けているという。
 ネット銀行は一般的に店舗や自前のATMを持たず、ネット経由で口座開設や預金申し込みなどをする。現金の引き出しや預け入れはコンビニエンスストアのATMやゆうちょ銀行、メガバンクなど提携金融機関のATMを利用する。その際、無料で使えるのは1カ月に一定回数までと決まっていることが大半だ。
 ネット銀行は日本ではジャパンネット銀行が2000年10月に初の専業としてサービスを始めた。その後も異業種から参入が相次ぎ、大手7行の15年3月末時点の預金残高は、11兆9556億円と10年前の約9倍に拡大した。
 ネット銀行を利用する利点の一つは預金金利の高さだ。100万円を1年物の定期預金に預けた場合、メガバンクの店頭だと0・025%が一般的。ネット銀行ではソニー銀やオリックス銀行の0・25%を筆頭に4~10倍の金利を適用する。店舗の人件費や賃料、自前のATMの運営費用などがかからない分だけ、預金金利を高く設定できる。
 預金金利以外でネット銀行を選ぶにはどうしたらよいのか。ファイナンシャルプランナー(FP)の根本寛朗氏は「自分の生活スタイルや目的にあったサービスのあるところを選ぼう」と助言する。
 例えばKDDI(au)のスマートフォン(スマホ)を使っている人は、じぶん銀行が有利だ。au利用者を対象に特典を提供し、コンビニATMなどを常に無料で利用できる。一定以上の預金残高などの条件を満たすとauの「WALLETポイント」も付く。ネット通販で「楽天」をよく利用する人なら楽天銀行が向く。楽天会員になって給与や賞与の受け取りや他口座への入出金などで利用すれば、共通ポイント「楽天スーパーポイント」をもらえる。
 資産運用に生かしたい人にもネット銀は多彩なサービスがある。ソニー銀は外貨預金で12通貨に対応し、積み立ては500円の少額からできる。証券取引をする人なら、証券会社との連携に強みを持つ住信SBIネット銀行や楽天銀、大和ネクスト銀行が選択肢だ。それぞれ自行のグループ証券会社の口座と一体的に利用できる。証券会社に開いた口座の資金が不足した場合などに、3行は自動的に資金を移すサービスを提供している。
 振込手数料でも強化する動きが目立つ。例えば住信SBIネット銀は今年2月から、利用状況に応じて月最大15回まで無料にする。これまでは一律で3回まで無料だったが、利用頻度が高い人ほど有利になるようにした。 安全対策に注意
 注意が必要なのがセキュリティー対策だ。最近ではネット銀行だけでなく、大手行や地方銀行などでもネットバンキングが拡大。IDやパスワードをネットを通じて盗み、不正に送金するなどの被害が急増している。全国銀行協会(東京・千代田)の調査によると、個人の不正送金被害件数は14年度で1094件と過去最高だった。
 ネット銀行側も対策に力を入れている。ジャパンネット銀は取引ごとに変わる使い捨ての「ワンタイムパスワード」を採用し、パスワードを表示する端末「トークン」を全預金者に無料で配布している。住信SBIネット銀やじぶん銀はパソコン、スマホなどによる取引の際、利用者のスマホに取引の承認を求める連絡を送っている。
 利用者側も対策が欠かせない。パソコンの基本ソフト(OS)やウイルス対策ソフトを最新のものに更新するのは基本だ。「定期的にパスワードを変えたり、預金残高を確認したりするといった工夫もしよう」とFPの八ツ井慶子氏は助言する。
 被害にあったら銀行は一般的に被害額を補償するが、パスワードの管理がずさんだったり、ソフトを更新していなかったりすると補償されない場合がある。(藤井良憲) まめ知識
地銀は金利高く設定
手続きもネット経由で
 ネット専業銀行より金利を高く設定しているのが地方銀行のネット支店専用の定期預金だ。地元以外から預金を集めるためだ。例えば北都銀行の「あきたびじん支店」では100万円を1年物に預けた場合で金利は年0・5%と、ネット銀行の2~5倍程度。秋田県や同県内の市町村にふるさと納税することが利用の条件だ。
 鳥取銀行や高知銀行、鹿児島銀行も昨年、新たに始めるなどネット支店専用定期は増えている。口座開設の手続きはネット経由や郵送などですむ。店舗を訪れる必要はないが、開設まで1~3週間ほどかかる。集める総額や1人当たりの預入額に上限や下限を設ける場合がある。
 
 
  日本経済新聞 朝刊,2016/01/13,ページ:18