大阪ガス―関電と本業で力負け?(記者の目電子版から)
2016.04.18
4月から家庭向けの電力小売りが自由化された。大阪ガスはライバルの関西電力から10万強の顧客を奪い、華々しいスタートを切った。だが、2017年春にはガス小売りが全面自由化される。電力事業で得る収益よりガス事業で被る損失の方が多いのでは。こうした懸念が株式市場ではじわりと広がっている。
関電は火力発電の燃料に調達する液化天然ガス(LNG)の輸入量は年944万トンと、大ガスを1割強上回る。導管は以前から大ガスと接続されており、ガス小売りへの参入を表明済みだ。電力同様、ガスでも関電と大ガスが顧客を奪い合うことになるのは確実だ。
関電は3月、大津地方裁判所から高浜原子力発電所3・4号機の運転を差し止める仮処分を出されたが、再稼働の道が閉ざされた訳ではない。SMBC日興証券の塩田英俊シニアアナリストは「原発の再稼働によるコスト低減が見込める電力会社に比べ、自由化の影響はノーガードの競争を強いられるガス会社の方が大きい」と指摘する。
好スタートを切った電力小売りも、年間ではむしろ収益の足を引っ張る。大ガスは事業計画に併せ、17年3月期の業績予想を公表している。連結純利益は520億円と前期推定比44%減る見通しだ。電力事業では営業利益と持ち分法利益を合算したセグメント利益は23億円と、前期推定(120億円)の2割以下に落ち込む。家庭や工場で省エネの取り組みが普及、再生可能エネルギーも拡大し、買い取り価格が下落したためだ。
本荘武宏社長は「これが本来の実力」と認める。家庭用電力小売りだけでも17年3月期は営業赤字とみられ、収益貢献には相当の時間がかかる。自由化を巡る不透明感が続くうちは、株価も盛り上がりに欠けそうだ。
日経産業新聞,2016/04/18,ページ:3