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川内原発、差し止め認めず、九電、電力自由化で攻勢、オール電化、5年ぶり営業再開、新料金の販促費増額。

2016.04.11

 九州電力は、福岡高裁宮崎支部が6日、川内原子力発電所(鹿児島県)の運転差し止めを認めない決定をしたことで、電力の全面自由化を巡り攻勢をかける。営業の販売促進費を増やし、新料金プランのテレビCMやイベントを積極展開。オール電化の営業も5年ぶりに再開し、販売電力量拡大を目指す。原発再稼働による収益改善効果を維持し、成長に向けた動きを加速させる。
 昨年8、10月に川内原発1、2号機がそれぞれ再稼働したことで広告費を確保でき、経営悪化で自粛していたテレビCMを再開。今年1月からは各営業所の規模に応じて販促費を振り分け、新料金への加入を促すために九州全域でイベントなどの営業を展開してきた。
 今年度はさらに営業が使える販促費を拡充する。前年度に投じた総額を夏までには上回る見通しで、テレビCMや商業施設などでのイベントの回数を増やす。顧客の離脱率に関して成績が優れた営業所に手厚く販促費を配分し、各営業所が競う態勢をつくる。
 月内に、東日本大震災後の原発停止による厳しい節電で控えていたオール電化の営業も再開する。
 家庭向けには最新のIHクッキングヒーターを紹介するほか、業務用厨房機器の電気式スチームコンベクションなど提案の幅を広げる方向で検討する。
 オール電化には、電気を多く消費して家計の負担が増えるとの印象が強い顧客もいるため、電力の全面自由化に合わせて採用した家庭向け料金ブランド「キレイライフプラス」の名称を営業に使う。効率的な電気の使い方も合わせて紹介し、新料金プランとともに導入を呼び掛ける。
 九電は大震災後の原発停止で火力の調達コストが膨らみ、2011年3月期に25%あった自己資本比率は15年3月期に7%まで落ち込んだ。16年3月期は川内原発の再稼働効果で800億円の利益が上乗せされ、5年ぶりの黒字確保にメドをつけることができた。
 九電は福岡高裁宮崎支部への訴え以外に5件の訴訟を抱えるが、運転差し止めを迫られる可能性のある判決は当面予定されておらず、いったん山場は越えたとみている。今後も司法判断による運転停止のリスクは残るが、原発の稼働を柱に傷んだ財務体質の立て直しを急ぎ、成長に向けた動きを加速させる考えだ。
 
 
 日本経済新聞 地方経済面 九州,2016/04/07,ページ:13