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人間ドック予約、24時間いつでも、マーソ、ネット活用で新風、700の医療機関と提携。

2016.04.04

 人間ドック予約サイトのマーソ(東京・港、山口博道社長)は2015年の設立以来、インターネットで人間ドックの予約を24時間受け付けるサービスを手がける。約700の医療機関と提携、ネット予約が根付いていない業界に新風を吹き込んでいる。1月に中国語のサイトを開設するなど、インバウンド需要も狙う。
 国立がん研究センターや徳洲会グループ、IMSグループなど700の医療機関と提携。利用者は都道府県や検査コース、受診希望日や金額などから医療機関を検索。名前や住所などの情報を入力すると、予約した医療機関から電話が来て予約が確定する。
利用料は無料
 予約自体に登録は必要ないが、会員登録するとこれまでの予約状況などが確認できる。利用料は無料だ。マーソは利用者が予約・受診した場合に、医療機関から報酬をもらうほか、広告収入も得る仕組み。これまで10万人ほどが利用した。
 マーソのサイトは13年に主にゴルフ場の予約システムを手掛ける三和システム(茨城県ひたちなか市)が始めた。取引先のゴルフ場経営者が病院も経営しており、相談を受けたのが発端だという。
 山口社長は当時ウェブやアプリを開発するITベンチャーで社長をしており、マーソの開発時から携わった。本格的に事業を拡大するために15年に事業会社として独立。山口氏が社長に就き、ベンチャーキャピタルからの出資も受けた。
 独立前の提携医療機関の数は370。これでは足りないと考えた山口氏は1カ月に多いときは80件に営業して回った。「当初は医療についての知識が乏しく、相手にされないこともあった。健康診断を意味する『健診』と病気の早期発見を目的とする『検診』を混同して注意されたことも」と山口氏は振り返る。門前払いする医療機関もあったというが、熱意を認めてもらい、医療について教えてくれる医師も少しずつ増えていった。
 受診を促すため、サイトの構築も工夫した。人間ドックのネット予約はまだ根付いていない。利用者の受診のきっかけを調べると、同世代の有名人ががんにかかったニュースを見て不安になったり、人間ドックについて検索してたまたまマーソのサイトを見つけたりした人が多いと知った。
 このため、サイトでは「そもそも大腸がんとはどのような病気か」「乳がんの検査はどのように行われるか」などのコラムを充実させた。人間ドック経験者のスポーツ選手や経営者へのインタビュー記事も載せ、検診の重要性を訴えている。
 扱うコンテンツが医療だからこそ、サイトでの表現について保健所から指導が入ることもあった。
 厚生労働省が誇大広告などを防ぐ目的で定める「医療広告ガイドライン」を熟読。複数の弁護士と議論を重ねて、治療効果などで利用者に誤解を与えないように細心の注意を払うようにした。
 人間ドックを受診するきっかけ作りも積極的に行う。独立後、共通ポイントの「Tポイント」を導入し、受診するとポイントがたまる仕組みを作った。提携施設で使える人間ドックのギフト券も発売し、母の日の「健康の贈り物」としてプロモーションした。
中国からも集客
 今年に入り、中国からの集客にも力を入れ始めた。1月に自社の中国語サイトを開設。きっかけは日本語のサイトに中国からの申し込みが増加したことだ。
 山口社長は、実際に中国からの利用者に同行しヒアリングした。中国では医療の質にばらつきがあり、画像診断で他人の画像を見せられたり、法外な金額を取られるなどの現状を知った。そこでサイトには必ず価格を出すようにした。受診のほか、送迎や診断結果の翻訳などを組み合わせる。
 中国からの利用者はサイトの情報発信だけでは信頼しない人もおり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用した質疑応答なども始めた。
 現在マーソのサイトで中国人が予約できる施設は20だが、年内に現在の5倍にあたる100に増やす計画だ。
 
 
 日経産業新聞,2016/04/01,ページ:15