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電力新世紀(1)優勢目立つ大企業-インフラ系、契約好調

2016.03.22

 4月の電力小売り全面自由化まであと10日。ガスや鉄道などインフラ系新規参入組を中心に、契約は順調だ。電気料金引き下げ、革新的な技術や付加価値の高いサービス創出、エネルギー産業の国際競争力強化という効果は、どこまでもたらされるのか―。自由化スタート後も電力確保やニーズに沿ったサービス開発など課題は残る。  
 【ブランド強み】
 「申し込みのペースが上がってきた。自由化への理解が深まってきたようだ」。東京ガス事業革新プロジェクト部の村越正章事業計画グループマネージャーは、4月に首都圏で始める家庭向け電力販売の手応えを明かす。
 同社への契約申し込みは、1月4日の受け付け開始から3月14日までの2カ月余りで約11万8000件に達した。10万件の大台乗せを発表したのは、新規参入事業者で初だ。同社の売り物は、都市ガスとセットの割安な料金プラン。2017年4月の家庭向けガス小売り自由化を受けてガス料金も安くなり、セット割の”お得感“がさらに高まるとの期待があるとみられる。
 加えて大きな力になっているのが「東京ガスライフバル」の統一ブランドでガス器具の販売や保安点検を手がけるグループ各社の営業網だ。得意客への訪問営業で、着実に成果を上げているという。
 【相乗効果期待】
 大阪ガスも2月末に申込件数が6万件に達し、順調な滑り出しをみせた。JXエネルギーは5万件超えを18日に発表。新規参入組屈指の低料金に加え、ガソリンや軽油、灯油とのセット割サービスが評価された。東京急行電鉄グループの東急パワーサプライ(東京都世田谷区)への申し込みも、2月下旬までに2万件を突破。東急グループが鉄道沿線などで展開するケーブルテレビ(CATV)事業やポイントサービスとの連動で割安感を訴求した成果と言える。
 経済産業省所管の電力広域的運営推進機関によると、申し込みの後、実際に新規参入組に乗り換えたケースは11日時点で10万5300件に上った。都市ガスや鉄道などの大手企業の優勢が際立つ。共通するのは本業で築いたブランド力と顧客基盤、本業との相乗効果がもたらす優位性だ。
 【独立系に試練】
 快走する大手とは対照的に、中小・ベンチャーの独立系事業者には厳しい試練が待ち受ける。資本力や顧客基盤で大手に見劣りがする中小は、ともすれば大手同士の安売り競争に埋没しかねない。
 ただ企業規模は小さくても、地産地消型の電力サービスなど独自性を追求している事業者はある。新しい価値の創造に向け、中小・ベンチャーならではの創意工夫をどう発揮するかが問われる。
 
 
 日刊工業新聞,2016/03/22,ページ:1