迫る電力全面自由化(3)電気・ガス一体販売―業界再編の契機に(時事解析)
2016.01.12
電力自由化時代に競争はどのような形をとるだろうか。
まず、電力会社が現在の供給区域を越え、他社の区域で販売する「域外供給」だ。豊かな事業経験を持つ既存電力会社が本気にならなければ競争は進まない。この点で電力各社は自由化の本番をにらみ、域外進出の準備を着々と進めている。
最大の激戦地と見込まれるのが、電力需要が集中する首都圏だ。関西電力は東燃ゼネラル石油と、九州電力は出光興産などとそれぞれ、東京湾岸に自前の発電所を建設する計画を進める。
都市ガス会社も有力なプレーヤーだ。東京ガスや大阪ガスは電気とガスをセットで販売する。都市ガス会社は発電燃料になる液化天然ガス(LNG)を、都市ガス原料として豊富に輸入する。
供給区域内に張り巡らせた販売・保守網も強みだ。顧客との接点を電力販売にも活用する。東京ガスの広瀬道明社長は「首都圏の電力需要の1割を確保したい」と語る。
電力会社もガス販売への参入を準備する。電力・ガス自由化で先行した欧州では一つの会社が電気とガスの両方を売る形態もみられる。電力とガスの相互参入や、発電コストを下げるための燃料調達や発電所運営での連携は業界再編を促す契機になる。
プライスウォーターハウスクーパースの狭間陽一電力システム改革支援室長は「小売り参入の条件は販売する電気を確保するための電源と、販売先となる顧客基盤を持つことだ。いずれかを欠く場合、これを持つ相手と組むことが必要になる」と指摘する。(編集委員 松尾博文)
日本経済新聞 朝刊,2016/01/06,ページ:28