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NTTドコモ。

2016.01.12

 2016年の通信業界はNTTドコモなど携帯大手3社による動画や健康支援などのサービス競争が激しくなりそうだ。各社が新たな収益源の確保をめざし娯楽や健康支援などに力を入れているためだ。政府が15年12月に携帯大手3社に料金値下げを指示、仮想移動体通信事業者(MVNO)の普及促進策もあり、経営環境も変わりつつある。  「病院で診察後に会計を待たず帰宅できます」――。ソフトバンクはこんな触れ込みで「スマート病院会計」と呼ぶ新サービスのPRを年始から本格化する。病院での診察費を、スマートフォン(スマホ)の通信料などと一緒に後払いできるサービスだ。  あらかじめパソコンやスマホで利用登録を済ませておけば、対応する医療機関で受診する時に、窓口で携帯電話番号とサービス利用を申し出るだけで使える。「診察が終わったらそのまま病院を離れられるので会計待ちの時間がゼロになる」と宮内謙社長は利便性を強調する。
 ソフトバンクのスマホやタブレット(多機能携帯端末)の契約者とその家族を対象とすることで他社への乗り換え防止につなげる。当初は130以上の医療機関が対応し、年内に1000以上に増やす計画だ。
 ソフトバンクは日々の食事メニューや運動状況を踏まえた健康指導がスマホで受けられる新サービスも今春に投入する。人工知能の技術を活用した米IBMの新型コンピューター「ワトソン」で利用者の体重や遺伝子検査の結果などをビッグデータ分析して生活習慣の改善に向けたアドバイスをする。
 NTTドコモも動画や音楽配信、金融・決済などの「スマートライフ」領域に引き続き注力する。15年度上期の同領域の営業利益は424億円と前年同期比3倍に伸びており、加藤薫社長は「15年度通年では700億円をめざす」と意気込む。
 グルメ情報の有料配信サービス「dグルメ」や動画配信サービス「dTV」が好調に推移しそうだ。dグルメは子会社で料理教室運営のABCクッキングスタジオと食べログを展開するカカクコム、レシピサイトのクックパッドの3社と提携。関連情報を有料配信する。
 KDDI(au)はじぶん銀行やau損害保険などを通じた金融サービスや決済代行の「auかんたん決済」、動画配信の「ビデオパス」や音楽配信の「うたパス」などを幅広くとりそろえる。ネットや携帯電話販売店で食材や雑貨類を販売する「auウォレットマーケット」での取扱商品も増やす。
 16年は各社のポイントサービスも一段と充実しそうだ。KDDI(au)の電子マネーとポイントサービスを組み合わせた「auウォレット」は、カード発行枚数が15年9月末時点で1580万枚を突破している。
 NTTドコモは15年12月に「dポイント」を始め、ローソンや日本マクドナルドと提携した。毎月の通信料などのほか加盟店での買い物でもポイントがたまる。
 ソフトバンクもファミリーマートなどで共通ポイント「Tポイント」が3倍たまる販売促進策を進める。
 スマホを起点とした便利なサービスが日々の生活の様々な場面に広がりそうだ。
「dポイント」はローソンやマクドナルドでもポイントがたまる
病院の診察費が後払いできるサービスに力を入れる
携帯電話販売店で食材などを販売する「auウォレットマーケット」を拡大する
 
 
  日本経済新聞 朝刊第2部,2016/01/01,ページ:9