イオン、葬祭事業を分社、特典充実の新会員カード、無料で相続相談、仏壇を割引販売、全国でフェア、囲い込み。
2014.09.18
イオンは葬祭事業でシニアの囲い込みを強化する。分社化で立ち上げた専門子会社が1日に事業を開始。電子マネー機能付き新会員カードの発行を月内に始め、相続の無料相談や仏壇の割引など特典を手厚くする。葬儀のほか、遺言信託や遺産整理なども含む多様なサービスを提供。全国で開く「終活フェア」も年間100回と従来の3倍以上とし、生前の会員数を2020年に20万人と現在の約4倍に増やす。
葬祭事業は総合スーパーのイオンリテールで09年に参入した。11年にお迎え、納棺の儀式、通夜、告別式、火葬までの定額プランの販売開始。利用者は年々増え、13年度は10年度の6倍になった。65歳以上の高齢者人口は約3238万人(3月時点)と総人口のざっと4分の1になっており、終活関連のサービスへの需要は高まると判断。子会社「イオンライフ」(千葉市)を通じ、取り組みを一層強化する。
新たに発行する「イオンライフワオンカード」は、イオングループの店舗で買い物するときに割引やポイント還元を受けられる。税理士に相続に関する無料相談ができ、葬儀や仏壇、仏具、墓地墓石、返礼品などの会員割引の特典もある。
人生の終わりに備えて身辺整理をする終活フェアの展開規模も拡大する。イオングループのショッピングセンターなどを会場に開催しており、遺影撮影や遺産の相談、メッセージノートやひつぎの体験などが好評という。首都圏や関西圏などを中心に月に2~3回開いてきたが、15年度から毎月10回前後、1年で100回に増やす。葬儀利用者の6割を占める生前の予約会員は現在5万1千人だが、サービス拡大により20年に20万人に増やすことを目指す。
終活関連の専門知識を備えた専門人材の独自の社内資格制度も15年9月をめどに導入する方針。介護や遺言、葬儀、保険、墓などの幅広い終活全般の相談に乗り、解決策を総合的に提案できる人材を育てる。現在は一般社団法人終活カウンセラー協会(東京・品川)が任意に資格を認定しているが、イオンライフが提供するサービスに合わせた資格制度をつくる。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本国内の死亡数は15年には10年比で1割増の約131万人、20年には10年を2割上回る約143万人に増える。ボイス情報(東京・文京)によると、飲食や香典返し、寺院への支払いなどの関連費用を含む葬祭ビジネスの市場規模は約2兆円。今後も横ばいで推移する見通しで、新規参入企業が増えている。
日経MJ(流通新聞),2014/09/12,9面