ビックカメラ、オムニチャネル加速――アプリ、来店誘導、強く意識(戦略ネットBiz)
2014.08.18
ビックカメラがグループの販売網とインターネットを連携した「オムニチャネル」戦略を加速している。スマートフォン(スマホ)のアプリを使ったクーポン配信など、消費者が店舗を訪れる仕掛けを相次いで開始。来年2月をめどにコジマ、ソフマップとネット通販のシステムや物流も統合する。展開地域や店舗の絶対数が競合他社より少ない弱点をネット部門の拡大で補う狙いがある。
「さらに3%ポイントアップ!」。スマホの画面に現れたスクラッチ式くじを模した画面をこすると、こんな特典内容が表示された。ビックが公式アプリを通じて、3月末から配信を始めた電子クーポンだ。スマホの位置情報機能を使い、消費者がビックの店舗に近づいてはじめてスクラッチ部分を削れるようにし、そこにクーポンを仕込んだ。消費者はそのまま店に来て買い物に使える。
ビックは2年ほど前から消費者向けの公式アプリを家電量販業界でも先行して始めた。だが当初は店舗への誘導を強く意識したものではなかったという。「ファーストリテイリングの『ユニクロ』など小売り他社の事例を参考にしながら設計し直した」(広告宣伝部)。電子クーポンも公式アプリを大幅刷新したのに合わせて導入した。
さらに今月1日から、スマホで撮影した写真印刷を注文してビックの店舗で受け取れるサービスをアプリに追加した。料金はLサイズで1枚が税込み31円。注文から最速30分程度で受け取れる。
スマホでとった写真を印刷して手元に残す人が若者中心に増えているという。「絹目」や「白フチ」など昔の印刷写真のようなレトロ調にすることもできる。レトロ調の写真は若者や女性に人気といい、アプリ上の注文でも対応できる。
顧客誘導だけでなく、ネット通販自体の強化も課題だ。大きな武器になるのが来年2月稼働を目指しているビック、コジマ、ソフマップのグループ3社のシステム・物流統合だ。最大30億円を投じて各社のサイトで受けた注文を一括処理し、在庫も共通管理できるようにする試みだ。各社のブランド力を生かすため、消費者の入り口となる通販サイトはそれぞれ残しながら、“中身”は統合を進めて効率化を図る。
大きな白物家電以外のネット通販で扱う商品は埼玉県東松山市のビックの配送センターに一本化する。全国に15カ所あるコジマの拠点も東松山に集約する。
システム統合を契機に3社のネット通販の ポイントサービス を相互利用できるようにする。首都圏など一部に限っている即日配送地域も拡大し、ビックやコジマでのネット商品の取り置きなども始める構想だ。「オムニチャネル戦略を背後から支える基盤整備」(安部徹常務執行役員)との位置づけだ。
消費者が実店舗で品定めをして、ネットの最安値で購入する「ショールーミング」の動きが広がったことで、家電量販店はアマゾンなどの攻勢に苦しんだ。各社とも逆にアマゾンに出店したり、ネットと実店舗でサービスを変えて差異化するなどの対策をとる。足元ではネット専業の価格攻勢はやや緩んでいるが、脅威は去っていない。
家電量販店ではヨドバシカメラが2015年3月期にネット通販事業の売上高を前期比約5割増の1000億円とする計画。ビックは一連の取り組みで3年程度で1000億円の大台超えを目指す。上新電機もネット通販の攻勢を強める。実店舗との連携を深め、ネット通販の利便性を高めて価格競争に陥らない戦い方を進める考えだ。
日経MJ(流通新聞),2014/07/16,8面