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噂話・服飾だけじゃない、仕事のヒントも女子会で、口コミなどで広がる輪。

2013.11.25

 人脈作りや交渉のコツ 子育てと両立、悩み共有
 女性だけで集まって語り合う「女子会」が花盛りだ。カクテルを飲みながら、上司の噂話やファッションの話題で盛り上がる――。そんなイメージが先行するが、最近の働く女性たちが求めるのは楽しさだけではない。男子禁制、本音を語るという「原則」はそのままに、人脈作りや仕事のヒントを得ようと集まった女性たちの姿を追った。
 「先週の製品展示会は好評だった」「ここの広告代理店は、仕事が早いよ」今夏、横浜市内のイタリア料理店に女性ばかり13人が集まった。いずれも外資系半導体企業でマーケティングや広報を担当している。ワインを片手に2時間以上も熱心に語り合った。彼女たちが集まるのはこれで3度目。電子機器に組み込んで性能を発揮する半導体にちなみ、「組み込み女子会」と名付けている。結成は2012年11月で、来月には肌に良いという薬膳料理を囲む予定だ。発起人の1人で、半導体設計企業大手の英アームでマーケティングコミュニケーションを担当する飯塚聖子氏(36)。組み込み女子会を提案したのは「同じ立場の女性たちと悩みを共有したかったから」だという。半導体企業は男性社員が圧倒的で、女性は少数派。ただ、社外・業界外に目を向けてみると、マーケティングは女性が手掛けていることが多い。製品展示会で顔見知りになった他社の女性の担当者に声をかけ、口コミで輪が広がった。
 「組み込み女子会」の話題は尽きない。中でもメンバーの関心が高いのは、会社のホームページの運営だ。日本語のページに情報を掲載するには、細かい表現まで海外の本社と何度もやり取りが必要になる。本社とのスムーズな交渉の仕方、機動的に情報を更新するコツなどを披露し合う。他にも外国人上司とのコミュニケーションやトップダウン方式での仕事の進め方など、外資系ならではの悩みを語り合う。「そのネイル(爪)かわいいね」など、いわゆる女子トークもする。しかし、プライベートには踏み込まずあくまで話題の中心は仕事。米フリースケール・セミコンダクタ日本法人勤務の増田清美氏(40)は「ざっくばらんに話せて仕事のヒントが得られる」と会を楽しみにしている。
 女子会は夜開かれるとは限らない。博報堂が主体となって昨年始まった「リーママ・プロジェクト」は、ランチタイムが活動時間だ。
 「リーママ」とはサラリーウーマンとママを足した造語。企業に勤め仕事と子育てに奮闘する女性が集まる。プロジェクトが目指すのは様々な情報交換と子育て中の女性社員ならではのアイデアを発信することだ。リーママたちは夜の会合への参加が難しい。時間に追われる中で唯一、融通が利くのがランチタイムだ。博報堂のママ社員が、面会を希望する会社に弁当持参で出向き、「制限時間1時間」で話し合う。口コミや交流サイト(SNS)「フェイスブック」などを通じて参加希望者が増え、伊藤忠商事や大手通信会社など約30社と開催した。話題の中心はやはり仕事と子育ての両立だ。「短時間勤務から通常勤務に戻ったら、子育てと両立できるのか」「在宅勤務で成果を出せるだろうか」「家事・育児で夫の分担を増やすにはどうすればよいか」など、話題は尽きない。女性の家事・育児の負担は重く、国内では約6割が出産後に退職するのが現状だ。リーママはまだ少数派で悩みを解決するのは簡単ではない。プロジェクトを主導し3人の子供の母親でもある博報堂マネジメント・プラニング・ディレクターの田中和子氏(38)は「『悩みを抱えるのは自分一人ではない』とまず安心する人が多い」とランチミーティングの効果を語る。先輩リーママから「短時間勤務でも成果は出せる」と指摘してもらうことで自信を取り戻すことも多いという。現在はSNSを使った情報共有が主だが、今後は子育て中の働く女性の声を生かした、製品やサービスにつながる提言も手掛けて行く予定だ。「潤滑油」「インキュベーター」――。本音トークを核にした女子会が、ビジネス上で様々な役割を担いつつある。

 日経産業新聞,2013/11/15,18面