ヤオコー、ポイントカード活用、顧客情報店を強く、お得意様に割引クーポン。
2013.08.19
商品開発や陳列の参考に
ヤオコーがポイントカードの顧客データを強い店づくりにつなげる取り組みを始めた。導入2年目にあたる2013年度(14年3月期)は4月から一部の店で特定顧客を狙った値引きクーポンなどの発行を開始。データを店長やバイヤーらが閲覧できるようにしており、今後は売り場作りや商品開発に生かす。現在は同社の売上高の約7割をカード会員が占めるが、13年度中にもこの比率を8割に引き上げる。
「ヤオコーカード」は買い物額210円あたり1ポイントが付く。500ポイントたまると、レジで500円の買い物券を発行する。カードの発行時だけ200円の手数料が必要だが年会費は無料だ。
同社は見送ってきたポイントカードを昨年3月、満を持して全店導入した。東日本大震災の復興需要の反動で売り上げが落ち込むとみたためで、12年度は主に販促に利用した。毎月2万円以上の買い物でポイントが最大500ポイント加算される「買うほどプラス」で会員の来店回数を増やし、特定商品を買うとポイントが加算されるキャンペーンも実施した。
取り組みが奏功し、12年度は既存店の買い上げ点数が前の年度比で3・3%増え、単独決算の時期も含めて24期連続の増収増益を達成した。13年度は集めた顧客データをフルに活用し、店の競争力を高めることが営業政策のテーマになる。
カード会員は13年3月末時点で126万人。カードには性別や年齢といった顧客属性が登録してあり、買い物行動を分析すればマーケティングや商品開発に応用できる。 そこで4月、特定顧客のレシートに割引クーポンなどを印刷する取り組みを始めた。例えば、来店頻度や買い上げ額が比較的高い顧客が卵や牛乳を買うと、ポイントを付けたり値引きしたりする。クーポンは2週間に1回程度発行している。競合店対策として4月は45店で実施したが、同様の対策をしなかった店と比べると売り上げや顧客の来店頻度が大きく伸びたという。
7月からは日用品メーカーと協力し、特定商品の購買行動を分析している。「普段は買わない人を対象にクーポンなどをつければ、試し買いにもつながる」(ライフスタイルマーケティング室の柳下潤一室長)という。
商品開発や売り場づくりに活用する準備も進めている。ポイントカードの顧客データは昨年には各店長、3月からバイヤーも参照できるようにした。これにより、例えば店長が鍋用の肉や魚、野菜などの食材と調味料を一緒に買ってもらえるように商品の並べ方を変えたり、バイヤーが新商品を開発する時に類似品の売れ方を参考にしたりすることなどができる。
ヤオコーの既存店は売上高が堅調な半面、客足が伸びを欠く。客数は6、7月こそ前年同月比で横ばいとなったが、昨年3月以降は前年割れが続いている。ただカード会員のうち、ほとんど来店しない人を除く客数は伸び続けている。
ヤオコーは「カード会員でない顧客の来店が減っている」と分析。7月から千葉県の店などで会員獲得キャンペーンを始めた。思わず買いたくなる売り場や商品を作り、毎日のように来てくれるファンを増やす。そんな固定客がもっと買ってくれるよう、店を一段と磨き上げる。こうした好循環を維持すれば、増収増益の記録は今後も伸びそうだ。(名古屋和希)
(参照元:2013年8月19日 日経MJ (流通新聞) 7面)
担当者のコメント
倍デー中心のバラまき施策的な印象から、ポイントに対して消極的だった一部のスーパーやGMSが、一点、CRMとしてのポイントサービス活用に目覚め、展開を始めている事例の枚挙に暇がない。
①優良顧客優遇のサービス設計と②特定顧客へのアプローチ施策が主だが、従前、①は顧客の差別化につながると否定的な声が多かった。
また、②は業態的にモバイルなどではリアリティに欠けていたが、レジ連携でレシートを媒体とする形で大きな広がりを見せている。ポイント否定派が一挙に投資をして最新CRM装備で反転に出る。
この流れは止まりそうにない。既存のポイント展開店はどう巻き返すか。