■5.誤解だらけのCRM
さて、どうしたらその企業の会員になってもらえるかということに戻りますが、もう既に答えは出ているのではないでしょうか。上記のような考え方を踏まえて、企業のメッセージを好きになってもらうということを真に理解するしかありません。ポイントサービスの場合、例えばポイント商品交換カタログ一つとってみても、どんな商品をセレクトしているか、どんなデザインやコピーにまとわれているのか、どういうタイミングで誰に向けてどのようにして送られてくるのか、全てが企業の発信するメッセージに関ってくるものなのです。そのメッセージは、歴然とした顧客戦略に基づき考え抜かれた、コンセプトワークでの仮説によるものです。その企業が発信するメッセージがあって初めてデータ分析というものが俄かに意味を持ってきます。例えば、漠然とOL向けのファッションを扱っている店が、「CRM」による顧客分析のもと、四十代が売上に最も貢献しているとの何らかの結果を得た場合、店のあり方なりブランドを四十代に振るのでしょうか?
一体この企業は何を発信したいのかということになります。
■6.コミュニティ・サイトのメールマガジン一通も企業のメッセージに繋がる
このメッセージというのは、また、顧客戦略上のいかなる手法にとっても最も大切なキーであり、企業ブランドそのものなのです。何を実施するにも、上流のコンセプトとして屹立する。
例えば、顧客会員制を取り入れ、ネット上でコミュニティを創出することになった。相変らずシステムだけ売りにくるシステム・ベンダーのいかに多いことでしょう。かといって、ブランド・コンセプトだけしかフォローできない広告代理店、仮説だけを提示し実践的手法には落とせないコンサルティング・ファームでは片手落ちです。コミュニティ・サイトを作るということは実は大変な作業を伴うのですが、全ては顧客=生活者とのコミュニケーションを何ゆえ行うのかという「目的・ポリシーの策定」に集約されてくるものなのです。(図「コミュニティ・サイト創出プロジェクト」)即ち、やはり、メッセージの策定なのです。このメッセージから発せられる樹形図の枝葉の末端それぞれが、有機的にメッセージそのものに帰還してくる。ディズニーランドで、ジュースをこぼした子供に声をかけることが、ディズニーランドという夢を売ることに有機的に結びついていることと正に相似形なのです。
消費者の絶対的優位のもとモノを売るのが難しく感ぜられるのは、旧来のプロダクト・アウト視点の企業なのです。生活者視点を素直に辿っていけば、売るものは必然的に企業の発信するメッセージという「モノ」であることが見出され、「モノ」差異化の要はこれまた生活者が握っています。その奥義が理解できれば現実のモノも結果として芋づる式に売れるということになる。
顧客会員制とは、この原理を合理的に導き出す究極の手法なのです。(了)