HOME > エムズレポート > 【コラム】<エムズの眼 第3回>メッセージでモノを買わせる企業姿勢を身につけろ
■3.企業は差異性をどのように築いていくか

どうしてその企業の(で)モノを買うのかを、もう少し仔細に検討してみましょう。
先ほど経済的社会的背景として、供給サイドは激烈な競争に晒されていると述べました。
先ずメーカーについて考えてみると、競争に勝つとは、いかに消費者=生活者に対し魅力あるモノを創り、モノを売るかということになります。
生活者に分るように他社のモノと差別化=差異化しなければならない。以前であれば、技術革新が牽引車でしたが、この変化の激しい時代に物理的に対応できない。
そうすると生活者のニーズをどれだけ微細に掬い、掘下げ、あるいは未来の心理にまで四次元的に広げ、つかみ出し、形にしたかがキーを握ってきます。
このキーは技術革新とは違って物理的に拘束されない無限の広がりを見せると同時に、また、生活者の足下にどこにでも転がり落ちているようなものでもあります。
極端な話、生活に関してはまさにプロである主婦が、自ら思いついたアイデアを商品化し、ネットにのせて販売したら、大メーカーの商品を押しのけヒットし、一瞬のうちに何億という収益が転がり込むというようなことは、事の本質を物語っています。
生活者心理をまさにコンシェルジュのようにすくい上げ実現してあげる。生活者はそのことに従来の「性能」や価格以上の差異を感じ取っている。
メーカーのブランド価値とは、以前の「性能」、「品質」という観点から、上記のような思想を、どういうポリシーと見せ方で生活者に実感してもらうかに様変りしていると言えます。
一方、流通について考えてみると、差異を生み出すということはどういうことかが更に複雑さを帯びてきます。生活者は、店頭にいったら「それしかなかった」という状態では満足しない。

それではと、生活者の趣向を先取りする、あるいはトレンドを睨んだコーナーを作ったり、また商品陳列をしたりと、それなりのモノを売る工夫をしてみると、今度は「選ばされた」とくるのです。
一体、このモノの溢れる時代に何が差別化になるのか。実は生活者は、やはりモノ自体は求めていないのです。
コンビニエンスストアに関するある調査なのですが、個人別の購入履歴データにより、お薦めの商品情報の提供を無料で行いますが、それを歓迎しますかと顧客に聞いたところ、必ずしも歓迎しないという答えが返ってきたそうです。
即ち、ふらっとコンビニに寄ったにも関らず、思いがけない商品が陳列してあるのを発見して購入することに満足を感じるので、そのようなサービスは返って迷惑だというのです。
このことはよく言われる「体験買い」「コト買い」ということの典型なのでしょうが、もう少し突き詰めてみるとモノ自体は売っていない、即ち企業が売る「何か」ではないと考えることができる。
では、何を売ることになるのか。ある時、ディズニーランドの混雑しているファーストフード売場で、買ったばかりのジュースをこぼした子供に、さっとスタッフがやってきて「ごめんなさい」と言うのだそうです。
そして即座に別のスタッフが新しいジュースを持ってきて手渡してくれる。これは全て「マニュアル通り」なのだそうですが、彼らは何を売っているのかというと、ディズニーランドという「夢」を売っているのです。
その「夢がこわれた」ら、こわれた「モノ」を売ることになるという論理です。即ちジュースというモノは売っていない。

■4.モノを売るのではない、メッセージを「売る」のである

前途の「売上を伸ばしたい」という企業の命題ですが、何を売るのかというのを上記の考察から捉えなおしてみれば、答えは必然です。
「何」というのはモノやサービスではない、上記のコンシェルジュであるとか、体験とか、夢とか、抽象的な言葉に置き換えられていますが、我々は「メッセージ」と表現しています。
企業が生活者に向けどういうメッセージを発信しているか、そして、それは企業が生活者に向けどういう「モノ」を売っているのかということと、実は同義なのです。
その「モノ」=メッセージのヒントは生活者の中にしかないのだから、①生活者視点から②「モノ」(メッセージ)を「創造」(想像)し、③生活者に「売って」(発信して)いく。
そして、生活者はその企業に共感してメッセージを「買う」ことになるのですが、それは即ちその企業(ブランド)のファンになったということに他ならないのです。
だからこそ物理的には(技術的には・サービスとしては)差異化されていないはずの実際のモノやサービスそれ自体もその企業から買うことになる。

ちなみにこの生活者と企業の流れはCRM(Customer Relationship Management)の過程そのものであり、また目的そのものです。
CRMにおいて、更にもう一方の流れが、顧客が発信したデータやメッセージの集積をもとに分析を行い、顧客の維持・育成、効率的売り方等に役立て、更に新たな生活者に向けての発信の元手にしていくことなのです。
この流れをクローズド・サイクルで行うのが顧客会員制に他ならない。どうしてその企業の(で)モノを買うのかということを突き詰めていくと、顧客会員制の思想に自然と行き着いてしまいました。(つづく)