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エネルギー大競争時代(11)巨大サービス企業誕生へ-「合従連衡」狙うは世界

2016.03.01

 電力小売りの全面自由化は総合インフラ産業化への号砲となる。電力、ガス、石油、通信、交通、不動産、流通・小売りなどの生活インフラを手がける総合企業体の誕生へ、業種の垣根を越えた合従連衡が進みそうだ。
 【提携を後押し】
 17日の東京・霞が関の経済産業省本館地下2階。一般消費者向けの電力小売り全面自由化説明会は300人以上の参加者が詰めかけた。質問が途切れることはなく、消費者にとって”自由化元年“への期待と不安が会場内に充満していた。
 「新規プレーヤーの数がそれほど増えるとは思わない。電力自体はもうかる商売ではない」と経産省幹部は断言する。大きな狙いは既存電力会社間の競争と、業種を越えた提携の後押しだ。「個社でもエネルギー総合企業になるし、産業としても総合エネルギー産業化が必要だ」。
 【未来業界地図】
 そして、より長期視点で見れば、エネルギーだけでなく、生活インフラ全般のサービスを一括提供する巨大企業体が形成される可能性がある。別の経産省幹部も「電力、ガス、鉄道、通信を手がける総合企業の時代になる」と先を見通す。
 日本総合研究所創発戦略センターの瀧口信一郎シニアマネジャーは「供給型、顧客密着型、そしてその派生形の地域密着型の三つに収束していく」と”未来の業界地図“を予想する。供給型は大手電力会社中心に大規模発電所を持ち、顧客密着型はソフトバンクやローソン、楽天などだ。地域密着型は地方自治体や地元ガス事業者が手を組んで、電気とのセット売りをはじめ総合生活サービスで勝負する戦略だ。
 【政策側の意図】電力自由化の先輩であるドイツに未来予想のヒントがありそう。自由化直後の1999年には8大電力会社が各地域で事業展開していたが、その後の競争激化で4社へ集約。そのうちの1社のエーオンは英国やスウェーデン、東欧に進出する欧州屈指の巨大エネルギー企業へ成長した。
 「政策サイドの意図は、縮小する日本市場の中で海外へ進出できる巨大エネルギー会社をつくること。鉄鋼、化学、石油など重厚長大型で起きたことが電力やガスでも起こる」(日本総研・瀧口シニアマネジャー)と合従連衡の予感が高まる。
 エネルギーより生活インフラ全般の方が世界市場規模が大きいことは言うまでもない。国内依存産業の激動の時代が幕を開ける。
 
 
 日刊工業新聞,2016/02/23,ページ:1