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電力使用AIで分析、電中研、見守り・節電・宅配に応用、「在宅中」精度よく推定。

2016.11.28

 電力中央研究所は、スマートメーター(次世代電力計)から得られるデータを人工知能(AI)を使って分析し、家庭の電力使用の状況を正確に把握する技術を開発した。住人の在宅状況を精度良く推定することなどが可能になり、幅広いサービスに応用できるとみている。

 スマートメーターは家庭などの電力の使用量を計測する通信機能付きの電力計だ。電気料金の算定などを効率化したり、事業所や家庭での節電の取り組みを促したりする効果が期待され、政府は2020年代前半までに国内全世帯への導入を目指している。

 電中研が開発した技術では、電力会社が家庭から取得するデータを利用する。データは電気料金を計算するためにおおまかな使用量を測定するもので、30分ごとに100ワット時単位で記録されている。これをAIで分析し、より詳しい使用状況を把握する。

 個別の世帯の在宅時・不在時の使用パターンを学習し、在宅状況を推定することなどもできる。欧州で公開されているデータを使って検証したところ、AIが「住人は不在」と判定したものが実際に不在だった割合は8割強に達した。AIを活用しない場合は6割台にとどまった。

 電中研は得られた成果を電力各社などに提供していく方針だ。電力自由化により電力業界では異業種も巻き込んだ消費者獲得競争が活発になっており、開発した技術を生かして新たなサービスが生まれる可能性がある。一人暮らしの高齢者の見守りや節電への活用のほか、宅配業者が住人の在宅状況をもとに効率的な配送ルートを選択するといった応用も見込める。

 ただ、電力の使用状況の分析はプライバシーにもかかわり、セキュリティー対策を進めるのはもちろん、実際の導入は消費者の同意が前提となる。実用化に向けては、理解の浸透がカギになりそうだ。(生川暁)
 

 日経産業新聞,2016/11/22,ページ:8