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コンビニの再編、なぜ?――店舗多いほど利益出やすく、コーヒーや食品開発競う(親子スクールニュースイチから)

2016.10.03

イチ子お姉さん
 ファミリーマートと、サークルKサンクスを傘下に持つ会社が経営統合したわね。コンビニ業界の再編が話題になっているわよ。
からすけ
 最近コンビニのニュースをよく聞くね。なぜ今起きているのだろう。急に近所のコンビニの看板が変わって、びっくりしたよ。
 イチ子 コンビニエンスストアで店の数1位はセブン―イレブン・ジャパン。3位のファミリマートと4位のサークルKサンクスが一緒になって2位に浮(ふ)上したのよ。ずっと2位だったローソンは商社の三菱(みつびし)商事の子会社になることが決まって、経営が大きく変わりそう。
 からすけ 何がすごい事なのかピンと来ないなあ。
 イチ子 この10年くらいでコンビニ業界は大きく変わったわ。街から店の看板が消えたコンビニがあるでしょ。ファミマは2009年にam/pm、15年にココストアを買収して、看板をファミマに替えたの。
 からすけ うちの近所のam/pmもなくなった。
 イチ子 ファミマは買収や経営統合(キーワード)した中小のコンビニを自社ブランドに替えて店の数を増やす戦略ね。でもローソンは違(ちが)うの。店構えはローソンだけど、業務提携(けい)するポプラやスリーエフのブランドを残した店も出しているわ。出店が出遅れた地域に強みを持つ他社を、取り込む作戦ね。
 からすけ 小さいコンビニが自分たちだけで店を続けられないのはなぜ?
 イチ子 コンビニの経営は店の数が多いほど有利なの。例えば、弁当やおにぎりなどの商品を仕入れる時に「たくさん仕入れる代わりに価格を安くしてほしい」とか交渉(しょう)がしやすくなる。1つの地域に店が集まっていると、商品を運ぶ距離(きょり)が短くなるから効率がいい。セブンが自力で年間1000店以上の新店を開いているのは店の数が収益を左右するからよ。ローソンやファミマはセブンに対抗(こう)しようと必死ね。
 からすけ セブンが強いのは単純に店の数が多いからなのかな。
 イチ子 それだけではないわ。商品が売れているのよ。1店1日あたりの売上高(全店ベース、16年2月期)は65万6000円で2位のファミマに比べると14万円も多いわ。プライベートブランド(PB=自主企(き)画)商品(キーワード)が人気なのよ。
 からすけ PBって何?
 イチ子 PB商品は小売店が独自に企画したり、メーカーと共同で開発したりして売っている商品よ。セブンは07年に「セブンプレミアム」というシリーズを売り始めたの。パン、菓(か)子、総菜など質の高い商品を手ごろな価格で提供しているわ。PBで最近の大ヒットはコーヒーね。100円でひき立ての香(こう)ばしいコーヒーを飲めるから、新たなファンをつくったの。
 からすけ セブンのアイスは好きだよ。
 イチ子 かつてのコンビニは、メーカーがつくるナショナルブランド(NB)の商品を店頭に並べていたの。これだとどこで買ってもほぼ同じ。でも、セブンはPBの成功で売り場が様変わりしたわ。主婦(ふ)が夕食の献(こん)立に入れられる総菜を充(じゅう)実したり、高齢(れい)者や単身者を意識した1人分の食品を開発したり。巨大スーパーの売れ行きが苦戦するなか、コンビニはセブンに追いつこうとしているファミマやローソンを含めて、客の要望に応えようと様々な工夫をしているわね。
 からすけ 今後も再編は続くの?
 イチ子 続くと思う。焦(しょう)点は4位のミニストップ。イオンが出資(し)しているけど、規模が小さいから競争力で劣るの。北海道のセイコーマートなど地域密着で頑(がん)張る所もあるけれど大手の攻勢はすごいわ。
 からすけ コンビニは今後どうなるんだろう。
 イチ子 三菱商事がローソンを子会社化するのは商社としての経営戦略よ。スーパーやコンビニを巻き込んで消費者関連サービスを強化したいの。でも、国内のコンビニは全体で5万店を越え、限界だとの意見があるわね。高齢者向けに介(かい)護関連の商品をそろえたり、女性向けなど様々な形の店を提案したりする動きがあるわ。海外進出にも貪(どん)欲よ。コンビニ業界はまだ変革していくはず。これからも目が離せないわ。
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店ごとに品ぞろえ工夫
 渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 「コンビニ人間」で芥(あくた)川賞を受賞した村田沙耶(さや)香(か)さんは、コンビニでアルバイトをしながら執筆(しっぴつ)していたと話題になりました。小説のタイトルだけでなく、コンビニが日常生活に欠かせない空間だと感じている人は多いはずです。
 コンビニの魅(み)力(りょく)はPOSシステムとポイントカードから集めた利用客の情報を分析(せき)し、店ごとに品ぞろえを工夫できること、振り込みやネットを利用したチケットの購(こう)入など、便利なサービスの幅(はば)を広げてきたことにあります。
 6月発表されたコンビニ顧(こ)客満足度1位は「セイコーマート」でした。北海道を中心に過疎(そ)化でスーパーが撤(てっ)退した地域にも出店し、値下げ努力や店内で調理した弁当の販売など利用客のニーズに寄り添ったサービスが魅力です。人口減少社会でのコンビニの役割を先取りしていると言えます。
キーワード
経営統合
 共同で経営するため会社を一緒にすること。2社が持ち株会社をつくり子会社になる形が出てきた。
PB商品
 小売店が主導した企画や、メーカーと共同開発した独自商品。個性が強く利益率が高いものが多い。
 
 日経プラスワン,2016/10/01,ページ:9