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日本コカ・コーラ、自販機アプリが売上増に貢献-“スタンプ早く集めたい”心理働く

2016.09.20

 日本コカ・コーラが4月に導入したスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)でスタンプがたまる自動販売機サービス「Coke ON(コークオン)」で、対象自販機の売上高が前年同期比で数%増えている。自販機の優遇サービスはサントリー食品インターナショナルや、ダイドードリンコも始めている。飲料業界は過当競争状態だけに、値崩れが小さい自販機チャンネルの重要性はさらに強まっている。各メーカーの顧客囲い込みで、デジタルマーケティングの動きも加速しそうだ。
 (編集委員・嶋田歩)  
 【優遇サービス】
 日本コカ・コーラは自販機設置の台数シェアで首位。コークオンは飲料を累計15本買うと、自分の好きな飲料1本が無料購入できる。同サービス対応の自販機は、2016年末までに全国14万台の設置が目標。新型の自販機だけでなく、既存機にも後付けが可能なことから、迅速な普及を目指す。
 同サービスで数%の底上げ効果があった売上高について、日本コカは具体的な数値を明らかにしていない。だが、伸び率は屋外設置より、屋内設置の自販機が上回っているという。
 屋外自販機は通りかかった人の購入が多いが、屋内はビル内にオフィスを構える企業のビジネスパーソンなどの“常連客”が中心となる。このため、同社は「スタンプを早く集めて無料購入したいとの消費者心理が働くようだ」と分析する。1日に2本、3本と、続けて購入する人も多いという。
 同業他社も、自販機限定のスタンプやポイントサービスを始めている。これに対し、日本コカは、単純に15本買えば無料で1本もらえるのではなく、スタンプ戦略の柔軟性を強調する。特定商品の販売促進で「来週だけ“ジョージアプレミアムのスタンプ数を2倍にする”などの作戦も、スピーディーにできる」と主張する。
 【戦略の迅速化】
 日本コカは販促戦略を迅速化できる利点とともに、スマホアプリで顧客と直接通信できる強みを生かす考えだ。「年代差や地域性など顧客階層の分析が当初、有効だと思っていたが、実際に始めるとそれらにはあまり違いがないことも分かった」という。
 自販機の売上高を左右するのは若い人とか東日本が多いとかではなく、立地性と気温の違いの方が大きい。それなら猛暑日の天気予報が出たら、その日だけスタンプを倍にするといった方法が効果的だ。「大阪でこのサービスをやるとして、普段東京に住んでいて、大阪に出張で来ているような人もいる。そんな事例にも対応できる」と話す。
 不動産大手と提携してビル入居企業の社員だけにキャンペーン割引を適用するなど、屋内型自販機ならではの販促も可能だ。ブラジルのリオデジャネイロ五輪・パラリンピックでは協賛企業の強みを生かし、短文投稿サービス「ツイッター」の公式アカウントを活用。特定選手の競技でリツイートした数だけ、提供本数を増やすキャンペーンも行った。今後も顧客とのコミュニケーション作戦を重視する考えだ。
 
 日刊工業新聞,2016/09/14,ページ:17