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客の年収・職業、AIで推測、NEC、小売・飲食店向け、購買履歴を分析。

2016.09.05

 NECは小売店や飲食店向けに顧客の年収や職業、家族構成などを推定する人工知能(AI)を開発した。プライバシー意識の高まりで個人情報の収集は難しくなっているが、AIが消費者の懐事情や生活スタイルを推測。小売店は品ぞろえや価格設定、販促に生かせる。顔認証技術やビッグデータ解析技術とも組み合わせ、小売店の販促を支援する。
 スーパーや家電量販店などはポイントカードやクレジットカードの会員登録の際に顧客の性別や生年月日、住所などの個人情報を収集している。小売店はアンケート調査なども実施しているが、年収や職業、家族構成などプライバシーに関わる詳細な個人情報まではなかなか分からない。
 開発したAIは性別など入手しやすい基本情報は分かっているが、年収などの詳細情報は一部の顧客しか判明していない場合に使用する。
 まず全員の購買履歴と基本的な個人情報をもとに、年収や家族構成などが同じだと推定できるグループを作る。次にグループの中で詳細情報が判明している顧客のデータと付き合わせ、仮説が正しいか検証する。
 例えば年収700万円のグループを作った場合、実際に年収が700万円の顧客がどれぐらいグループの中にいるのか詳細情報が分かっている顧客のデータを基に調べる。多ければ同じグループに属する全員の年収は700万円と推定できる。少なければ多くなるまで仮説の検証を繰り返し、精度を高める。
 推定した詳細情報に基づいて、ビジネスマンや主婦など店舗の主要顧客層の生活スタイルに合った商品を仕入れたり、効果的にダイレクトメール(DM)を送ったりできるようになる。
 「品ぞろえが良くない」「関心のないDMがたくさん送られてくる」といった顧客の不満を解消し、小売店の販売増につなげる。今後1年ほどかけてシステムの精度を高め、実用化を目指す。
 NECにはすでに店内の監視カメラを使った顔認証システムがある。カメラに映った来店客の顔から年齢や性別を自動的に推定できる。推定した顧客をターゲットにした商品をそろえるなどして、売り上げを増やす。
 さらに気象情報や交通情報、広告の出稿状況などのビッグデータ解析技術を組み合わせて、来店の動機、背景まで分析できるようにした。天候と客足の相関関係などを明らかにし、よりきめ細かな販売戦略を立てられるようになるという。
 NECは4月に公表した中期経営計画で小売業向けのIT(情報技術)サービスを事業の柱に位置づけた。AIや顔認証技術を駆使し、2018年度は同事業の売上高で15年度比2割増の1600億円を目指す。(吉野次郎)
 
 日経産業新聞,2016/09/02,ページ:6