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ユニーファミマ統合苦難の船出(下)コンビニ、改装重荷――取引先、選別に不安、拡販の好機も。

2016.09.05

 中部の流通業の要であるユニーグループ・ホールディングス(GHD)の再編劇は、地元関係者に少なからぬ影響を及ぼす。一例が「サークルK」「サンクス」の看板が変わるコンビニエンスストアのオーナーだ。
 「改装したばかりなのに。また出費しろというのか」。愛知県内で複数のサークルKを経営するオーナーはため息をついた。本部の勧めもあり老朽化した一部店舗を改装し、今年オープンした。改装費用は総額で数千万円ほどかかった。
 そのさなかにユニーGHDの経営統合のニュースが飛び込んできた。しかもコンビニブランドは「ファミリーマート」へ一本化されることに。改装費用の回収が終わる間もなく、ブランド転換を迫られる。ファミリーマートは「改装費用は原則本部が負担する」というが、「統合の進捗を知っていたら、改装時期を後ろ倒しにできた」と不信感を隠さない。
閉鎖・移転1000店
 サークルKとサンクスは統合後およそ2年半で順次ファミリーマートへと姿を変えていく。店の看板だけでなく、ポイントカード、ATM、レジシステムも刷新するとみられ、店員の再教育も必要だ。「我々にとってメリットはほとんどない」とオーナーは嘆く。
 ユニーGHDは8月、全国に6千店以上あるサークルKとサンクスのうち1千店舗の閉鎖・移転を発表した。不採算店の整理や、統合に伴う店舗網の重複解消が狙いだが、身近な店舗が姿を消したり、移転したりするケースがありそうだ。
 皮肉にも統合前日の31日、名古屋市内のあるオフィス街の一角で「サークルK」が改装オープンした。紅白の垂れ幕を飾った店内に早朝から多くの利用者が訪れた。女性客の一人は「朝から弁当の種類がそろっていて、家族の分も買うためよく訪れる」とサークルKの魅力を話す。ある男性客は「明日以降、看板はどうなるんだろう」と不思議がっていた。
 ユニーGHDに商品を納入する企業への影響も避けられない。ユニーグループ会を構成していた主要取引先だけでも約700社。経営統合でユニーGHDの存在感が希薄化し、取引先も何らかの形で選別される可能性があるためだ。
 「統合後の取引がどうなるか。売り上げ計画が立てられない」。ある中部の食品関係の取引先は頭を悩ませる。コンビニ事業では、サークルKとサンクス1店の売上高は1日約43万円。ファミリーマートは52万円弱で、統合後は同社が扱う商品が優勢になるのではないかとささやかれる。
商習慣見直しも
 ユニーGHDが長年築いてきた商習慣が変わるかもしれないという不安も聞かれる。あるコンビニオーナーは「サークルKサンクスでは複数店舗のコンビニ経営者への優遇措置があり、統合で見直されると苦しい」と話す。ユニーGHDが卸業者への優遇措置を見直すのではないかとの観測もあり、「業績に影響がでる卸があるかもしれない」(関係者)。
 一方で取引先にはチャンスにもなり得る。例えばサークルKとサンクスで人気商品の焼き鳥や焼き芋だ。統合新会社の社長に就任するファミリーマートの上田準二会長は焼き鳥などを同店で扱うことに意欲を見せており、単純合算した全1万8千店で仮に採用されれば、納入元の企業の売り上げが一挙に跳ね上がる可能性がある。
 ユニーの経営統合は中部の関係先にとっても正念場となる。大きな変革の機会を生かし、新たな成長軌道をどう描くかは、それぞれの努力にかかっている。
 長縄雄輝、高橋そらが担当しました。
 
 日本経済新聞 地方経済面 中部,2016/09/01,ページ:7