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「いちげん」逃さぬサイト、ピザハット、閲覧履歴を活用、注文方法など自動で表示。

2016.08.29

 日本KFCホールディングス傘下の日本ピザハットがネットからの受注を増やしている。顧客の過去のホームページ閲覧履歴をもとに初めて同社のサイトを見たユーザーには注文や会員登録を促すメッセージを自動的に表示する仕組みを導入したからだ。“いちげんさん”でも迷わずに注文できるようにして受注率の向上につなげている。
 「ピザハットへようこそ!知らないと損する3つの会員メリットを案内します!」。日本ピザハットのホームページにアクセスしていきなりこのメッセージが出てきた人はおそらくいちげんさんだ。ポップアップ画面をクリックしていくと、クーポンやポイントサービスなどの会員メリットを紹介し、会員登録画面にそっと誘導される。
 メニューページに移れば今度はトッピングサービスの案内が出てくる。どこのボタンをクリックすればトッピング注文ができるかも丁寧に説明してくれる。これも同サイトを初めて見た人向けに表示されるメッセージだ。
 ベースになっているのは顧客のパソコンに残っている過去のホームページの閲覧履歴情報だ。これをもとにピザハット側のサーバーが自動的にメッセージ表示の有無を決めている。2回以上サイトを見ている人は仕組みを理解していると判断し、メッセージは出さない。「初めてサイトを見た人向けのナビゲーション」(同社マーケティング部の渡辺圭祐氏)という位置づけだ。
 その効果はかなり大きい。冒頭の会員メリットを表示することで入会率は3割もアップ。トッピングのメッセージも購入率を15~40%引き上げた。
 同社が閲覧者の履歴情報をもとにしたホームページでの販促に力を入れ始めた背景にはこれまで主体だったメルマガ販促が効力を失いつつある事情がある。利用する情報機器がパソコンからスマホやタブレットに移行する中、不要なメールを着信拒否するユーザーは増加している。
 ピザハットも200万人のメルマガ会員中、実際にメールが届くのは100万人強にしか過ぎないという。新規会員もかつては7割ぐらいがメルマガを受け入れていたが、今はほぼ半数が拒否するため、効果が限定的な販促ツールになってしまった。
 「これからはいかにサイトに来てくれた人を取りこぼさないようにするかが重要になってくる」。渡辺氏はデジタルの世界での戦術変更をこう説明する。購買につなげるにはサイトを見ている閲覧者がどんな消費者かを把握し、適切なメッセージを表示していけるかがカギを握る。今は初めての人向けにメッセージを配信しているが、9月ごろからはすでに登録済みの会員向けに誕生日向けのクーポン紹介などの取り組みも始める予定だ。
 同社の売り上げのうち、ネット注文が占める割合は約45%。首都圏など都市部だけでみれば、すでにネット比率が7割に達する店もある。チラシだけに頼る販促はもう昔の話だ。競合大手もネット受注の強化に力を入れ、サイトやアプリを使いやすいように改修を続けている。デジタルでの販促手法の進化はさらに続きそうだ。
(小沼義昭)
 
 日経MJ(流通新聞),2016/08/24,ページ:19