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電力小売り自由化(1)道内家庭料金どう変わる――10社程度参入、「お得感」で囲い込み(なるほDo)

2016.01.18

 家庭向け電力小売り事業が4月1日に自由化される。北海道でもガス会社や流通系企業を中心に10社程度が参入を準備。すでに先行予約の受け付けを始めた会社もある。道内の家庭も北海道電力を含む各社のメニューを見比べながら利用先を選べるようになる。北電の1社独占からの転換で、生活に不可欠なエネルギーである電力のあり方はどう変わるのか。 つながり生かす
 道内で具体的に家庭への電力小売りを準備しているのは、ガスや灯油、日用品の供給、配達などで、家庭とつながりを持つ企業が多い。従来のサービスに電力を付加して販売し、顧客を囲い込んだり、新規利用者を引き寄せる「お値打ち品」として電力を位置づけていたりする。
 囲い込みの代表格がLPガス各社だ。LPガスは販売エリアが重なり、特に札幌圏で熾烈な販売競争を展開する。各社が意識しているのが、LPガスの販売会社をグループに抱える北海道ガス。同社はLPガスの利用者には使用量に応じて払う従量料金を北電より3~6%ほど割引して売る計画。これを前提に各社はメニューを設定中だ。
 札幌周辺でLPガスを販売する札幌ガス(札幌市)は、親会社のクレックス(千葉市)が楽天と電力小売り事業で提携した。4月からは楽天のポイントサービスと連動したメニューで、割安感のあるサービスを作るとしている。 優良顧客を開拓
 ケーブルテレビやインターネット接続サービスを展開するジェイコム札幌(札幌市)は電力を新たな優良顧客開拓のツールと位置づける。電気を使うほど、北電と比べて割引率が高くなるプランを設定し、ケーブルテレビなどの契約率が低い戸建て住宅の契約増を目指す。来年度は戸建て専門の営業担当者を10人増やし40人にする方針。
 旅行会社のエイチ・アイ・エスも3日、道内店舗で電力販売を始めた。北電の基本・従量料金よりも5%割安なメニューを設けた。旅行代金が割安になるセット料金もある。一方、ソフトバンクや東燃ゼネラル石油は道内では当面、サービスを予定していないという。
 もっとも、多くの新電力は料金メニューを「北電より数%割安」とするが、大半は北電の「従量電灯B」の料金表に対する割引率。オール電化などの住宅では多くが「従量電灯B」とは異なる割安な料金表で契約しており、新電力に変更すると逆に割高になるケースもある。適用条件が複雑な場合もあり、選択には慎重な見極めも必要だ。 (木曜日に掲載)
いちたかガスワン 道外発電所から電力
 LPガス、灯油販売のいちたかガスワン(札幌市)は青森県平川市のバイオマス(生物資源)発電所から電力調達を始めた。道内と本州とを結ぶ送電線「北本連系線」から電気を受け取る。4月の電力小売り自由化に備える。北本連系線は容量が小さく、緊急時には使えない懸念もあるが、道内では利用できる電源が限られ、本州から送電した方が有利と判断した。
 間伐材などを使う津軽バイオマスエナジー(青森県平川市)が昨年12月に営業運転を始めた発電所と契約した。出力6250キロワットのうち500キロワット分をすでに購入、現在は大口利用者に供給している。いちたかは苫小牧市の太陽光発電所とも契約。日本卸電力取引所なども使い、家庭用小売り参入後に必要な電力をまかなう。東北や関東の他の電源利用も模索する。
 いちたかのLPガスと灯油の両方を使う家庭には北海道電力の基本・従量料金より7%安く電力を供給する。LPガスだけの家庭は5%、灯油だけの家庭は4%。2月から受け付け、初年度約1万件の契約を目指す。
 
 
 日本経済新聞 地方経済面 北海道,2016/01/14,ページ:1